アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】２

＃８１ ページ32

「 …ごめんね、話逸らしちゃって 」



今は、望の過去を聞こうとしているのに。



謝ると、望は 大丈夫やで って首を横に振ってソファーの背凭れに背中を預けた。



桃『 ……俺な、女子のこと、あんまり信じられへんねん』


「 …うん 」


桃『 あ、もちろんAさんも最初は全然信じてなかったけど……、でも一緒に暮らす内に、悪い人ではないんやろなっていうのはわかった！…こうやって、プリン買ってきてくれたりしたし…！』




慌てたように付け足す望は、見ていてなんだか面白い。



「 でも、完全に信じてるってわけではないでしょ？」


笑いながら聞くと、望は小さく頷いて ごめんな… って謝ってきた。




「 いや、そりゃこんな短期間で信じてもらえるなんて思ってないし、全然大丈夫だから…！」


わかりやすく望が落ち込むから、私の方が焦って謝ってしまう。





桃『 俺、中２ぐらいの頃は実家から遠いこんな街の高校に通おうなんて、思ってなかってん 』


「 …うん 」


桃『 中２の終わり頃から付き合ってた彼女にな、学年上がって受験も本腰入れなあかんって時に、勉強に集中したいからしばらくは連絡も取らんとこって言われて 』


「 うん 」


桃『 彼女のためや思って連絡もせずに、別の高校受けるために勉強ばっかしててん。……せやけど俺、見てもうて 』


「 …………なにを…？」


桃『 あいつが、……彼女が、他の男と腕組んで歩いてるとこ 』


「 …え 」




中学生で、浮気してたの……？



しかも、最もらしい理由つけて彼氏からの連絡絶って。




……なんだそれ、彼女がやってること、最低以外の何物でもないよ……。







桃『 問い質したら、開き直られて、結局別れた。………こんなやつがおる街の高校になんか行きたくないと思って、俺は志望校を今の高校に変えた。……とにかくあいつがおらん遠い街の高校にって、それだけの理由 』


「 ……うん 」


桃『 部屋探してる時に、淳太のじいちゃんに声かけられて、ここに来た。……せやから俺、ここに住み始めた時期って、Aさんとあんま変わらんのやで 』


「 ……そっか 」


桃『 あの時期ぐらいからやと思うねん。……女はどうせ裏切るんやって、信じられんくなったのは 』




そう吐き出す望の横顔は、なんだかとても切なそうだった。

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