アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】２

＃７３ ページ24

緑『 ……今日は、俺が起こしに行こっか？』



翌朝、望との喧嘩のせいで落ち込んでる私に気を遣ったのか、神ちゃんにそう言われた。


私はいつも通りに起きて、いつも通りに神ちゃんと朝ごはんを作って、いつも通りに神ちゃんと接していたつもりだったんだけど、…自分が思ってる以上に、望との喧嘩が私の中で結構キテて。




テーブルに作った朝ごはんを並べながら、神ちゃんの言葉に首を横に振る。





「 …大丈夫 」


緑『 でも、のんちゃんと話しづらいやろ？』


「 …なんとかする 」




心配そうな神ちゃんを振り切って、私は２階に上がった。




望の部屋の前に着いて、ため息が出る。……私に起こされても、望は迷惑だよね……でも、起こさなきゃ望が遅刻しちゃうかもしれないし…




とりあえず望は最後に起こそうと思って、淳太くんの部屋のドアの方に身体を向けた時。



ガチャッとドアが開く音がして おはよ、A って声が聞こえた。



この声……






慌てて振り返ると、望の部屋の隣のドアが開いていて、そこから流星が顔を出していた。




「 …流星……、起きてたの……？」



流星は既に制服に着替えていて…髪もばっちりセットされている。…一体、何時に起きたんだ…？




青『 階段上ってくる音聞こえたけど、やっぱAやったか 』


流星はそう言うと部屋を出て、私の前に立った。





「 …なんで…… 」


あの、必死で起こしても起きない流星が、起きるのに時間がかかる流星が、……なんで……




混乱する私に びっくりしすぎやろ、失礼やな って笑った流星。





青『 目覚ましかけて頑張って起きてん 』


「 どうして…？」


青『 んー、……Aのため？』



流星の言葉の意味がわからなくて首を傾げた私を見て、流星は軽く笑う。





青『 ……望のこと起こしづらいやろうから、俺がAの代わりに起こしたろ〜、みたいなね 』


「 …流星…… 」



１人で起きた頑張りとか、私に対する気遣いとか、そういう優しさが流星らしくて。…意味もなく、なぜか涙が出そうになる。





青『 望のことは俺が起こすから、Aは他の人起こしてやって 』


「 ……ありがと、流星 」


見上げると、流星は少し呆れたように笑って私の頭に手を置いた。






青『 そんなに泣きそうな顔すんなや。……望とは、絶対仲直りできるから 』

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