アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】２

＃６７ ページ18

ぽつりぽつりと、神ちゃんは話していく。





緑『 俺なあ、小６ぐらいの頃に、初めて好きな子できて 』


「 うん 」


緑『 幼馴染みの家近い子で、恥ずかしかったけど、思いきって告白しようと思ってん 』



そうせんとなんにも変わらへんって思ったから って付け足した神ちゃんは、昔を懐かしんでいるような、優しい目をしている。




緑『 ほんで、ちっちゃい頃から２人でよく遊んでた公園に呼び出した。………ずっと待ってたんやけどなあ…… 』



言葉に詰まった神ちゃんの声が、なんだか震えていて。


慌てて顔を上げて神ちゃんの横顔を見ると、…少しだけ涙ぐんでいた。


それだけ辛い過去を、私は聞こうとしてるんだ。……ちゃんと、受け止めなきゃ。





大丈夫 って意味で背中を摩ってあげると、やっぱり泣きそうな声で ごめんな って神ちゃんは謝ってくる。





「 謝らないで、……無理しないでも良いし 」


緑『 ……ん、大丈夫。………続き、聞いてもらえる？』


「 うん、ちゃんと聞いてるよ 」


緑『 いつまで経っても来やんかって。……俺、告白すらさせてもらえんのやなあって家に帰ったら、なんか、変な空気になってて 』


「 うん… 」


緑『 全体的に重い空気やったから、オカンにどうしたんか聞いてん。……そしたらな、俺が好きやったやつ、………事故に遭って死んでもうたんやって 』


「 ……っ 」


緑『 公園に向かってる途中に、信号無視した車に轢かれたらしい 』



訥々と話していく神ちゃんは、無理して微笑んでいるようにしか見えない。



ずっと待ってた好きな人は、気づかない内にいなくなっていた。……小６が受け止めるにしては、大きすぎるショックだったんじゃないかな…。





緑『 お葬式の時になあ、あいつの両親に言われた。……あんたがあの子を呼び出してなかったら、あの子は……って 』


「 ……なんで… 」




なんでそんなひどいことを、彼にぶつけるの？悪いのは、信号無視したやつじゃない。







緑『 でも俺、なんにも言い返せんかった。……それは、俺もどっかで思ってたし、確かにそうやなあって納得してもうたからさ 』



いなくなった子の両親は、行き場のない怒りを神ちゃんにぶつけたんだ。



神ちゃんは真面目だから、その言葉を真に受けちゃったんだ……

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