アン・コワン・アンソレイエ【 虹 】２

＃５０ ページ1

「 …… 」



私が黙ったまま腰を下ろすと、しげくんは笑った。




「 …なんで笑うの 」


赤『 いや、……やっぱ座るんやなあと思って 』


「 ……気になるもん、しげくんが私に冷たい理由。それ聞かずに帰りたくない 」





しげくんは私の言葉に黙ると、腕を掴んでいた手を離した。




赤『 ………呼び方 』


ぽつりと、しげくんが零した言葉に反応が遅れる。





え？と首を傾げた私を見て、しげくんは呆れたようにため息をつく。






赤『 しげくんっていう、呼び方が嫌やねん。……わざわざ名前教えたのに 』


「 ……しげくん… 」


赤『 …なんやねん 』





なにそれ、可愛い。そんなこと素直に言ってくれれば良いのに、言えずにずっと私に冷たい態度とり続けてたの？




男の子に対して 可愛い なんてあんまり思ったことないんだけど、合わない視線と照れたような横顔、全てが可愛く見える。





「 わかった。じゃあ、しげくんって呼び方やめる 」



おう っていう素っ気ない返しすら可愛く見えるんだから、私は相当やばいかもしれない。





「 しげくんじゃなかったら、なんて呼べば良い？」


赤『 …別に、しげくん以外だったらなんでもええ 』


「 同級生だし、普通に重岡って呼び捨てとか？あ、みんなみたいにしげって呼ぶ方が良い？」


赤『 ……却下 』


「 えぇ〜……じゃあなんて呼べば良いの 」



私のネーミングセンスじゃ、これぐらいしか思いつかない。


しげくんはベンチの背凭れに背中を預けると、やっと目を合わせてくれた。






赤『 …下の名前で呼べばええやん 』


「 …え、」


赤『 淳太のことも照史のことも流星のことも小瀧のことも、下の名前で呼んでるやん。…�陲舛磴鵑��陲舛磴鵑覆里法⊃鰺気�んとか呼んどるし 』


「 …… 」


赤『 …みんな下の名前やのに、俺は苗字っていうんは、………なんや、不公平、やろ 』




待て待て、これは可愛すぎる。

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