すれ違い。【橙】 (ページ9)

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橙『なあ、Aの好きな人はどんな人なん？』

「 …え」

突然の質問の意味がわからなくて、面食らってしまった。

「なんでそんなこと聞くんですか？」

橙『 …いや、ただ気になっただけやねんけど』

気まずそうに目を逸らした照史先輩は、鼻の頭を指で掻いた。

「 ……照史先輩には秘密です」

橙『なんでやねん！』

照史先輩が笑いながらつっこんできた時、ちょうど私の教室の前に着いた。

「じゃあ、送ってくれてありがとうございました」

橙『全然ええよ』

微笑んだ照史先輩の視線は、私を通り越して教室の奥へ向けられた。

その先にいるのは、……ナナだ。

橙『ナナー、ちょっとええ？』

照史先輩の声に反応したナナが、こちらにやって来た。

『なに、どうしたの？』

橙『ちょっとな。……ほなA、またな』

「あ、はい」

なんなのよーって文句を言うナナの腕を引っ張って、照史先輩は廊下の窓際に移動した。

２人が話し始めた様子を見て、私はため息をついて自分の席に座った。

席からは、照史先輩とナナの姿がよく見えて。

楽しそうに笑ったり、悩んだように深刻そうな顔をする照史先輩。

そんな照史先輩の肩を、ナナは明るい笑顔で叩いてた。

……２人が仲良くしてるのが目に入るだけで、胸がちくっと痛んだ。

「 ……はあ」

見てられなくて、私は俯いた。