すれ違い。【橙】 (ページ19)

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橙『その優しい視線っていうんはあれやから、好きな人見る目ちゃうから』

「 ……どういうことですか…？」

橙『ナナは小さい頃から知ってて妹みたいなもんなんやで？

俺がナナに優しい視線送ってるんやとしたらそれは、妹を見る目や』

照史先輩の言葉に、なにも言えなくなる。

「 ……じゃあ、照史先輩はナナのこと好きじゃないんですか…？」

橙『ナナを恋愛対象やと思ったことなんて１回もない。あいつもそんな感じやろ』

思い出したのは、いつかのナナの言葉。

〝幼馴染みが恋し合うなんて、漫画と妄想の中でだけだからね〟

あの言葉は、ほんとだったんだ……

そのことがわかって、どんどん身体の力が抜けていくのがわかる。

橙『なあ、A 』

「 …はい…？」

橙『こっち見て』

戸惑っていると、早く、って急かされて、ゆっくりと照史先輩の方へ振り返った。

すると、どこまでも優しい、照史先輩の目と目が合った。

優しいけれど、ナナに向けるそれとは違う優しさを兼ね備えてて。

「 ……照史先輩…？」

名前を呼ぶと、照史先輩はふわりと笑って。

橙『俺が好きな人見る目は、こういう目やと思うんやけど』

「 ……へ…？」

橙『好きから、大事にしたいって思うし、ずっと見ときたいって思うねん』

そう言った照史先輩の大きな手が、私の頬に添えられた。

橙『俺からしたら、その相手がAなんやで？』