4-3.怯え ページ3
沈んだ気持ちがサッカーにも出てしまっていたようで、次の日は河川敷の自主練を再開したが、何も上手くいかなかった。
「A、やっぱり次の試合のことが気になってるの？」
「うん……」
「そんなに悩まなくてもさぁ、試合に出られるだけラッキーぐらいに思っておいたら？」
狩屋くんの言う通り、他にも控えの選手がいる中でエースストライカーの空いた穴に入れてもらえるのは名誉なことなのかもしれない。しかしここで素直に喜べるほどの自信も、実力も、私は持ち合わせていなかった。
「せっかくだし、僕とシュート練しようよ！」
信助くんに手を引かれ、ゴール前までやってくる。
「よし！ いつでもいいよ！」
「うん……」
軽く助走をつけて、左足をボールの隣で軸足にしながら右足の内側でボールを蹴る。
剣城くんに教えてもらったシュートは入部当初に比べればゴールから外れることも少なくなったが、試合で使えるかと問われれば否だ。信助くんに片手で止められている。
「ゴールの隅を狙ってみて！」
言われた通りにゴールの四隅を狙ってみるが、今度は狙いすぎてゴールから外れてしまう。
「リラックス、リラックス！ これは練習だよ！」
「わ、わかってるんだけど……」
結局その日は不完全燃焼のまま練習を終えた。
.
部活の方では倉間先輩と剣城くんの指導のもとでシュートの練習を行ったが、倉間先輩の表情は曇る一方だった。
「おいA、集中できてるか？」
「すみません……」
先輩は呆れた様子で溜め息をつき、「ドリンク取ってくる」とベンチの方へ行ってしまった。私と剣城くんが二人で残される。
「剣城くんは……私がフォワードとして試合に出ていいと思う……？」
「ああ」
剣城くんは顔色ひとつ変えずに言った。
「…………本当に？」
相当面倒な聞き方をしている自覚はあったが、それでも言葉にせずにはいられなかった。そのくせ、いざ声に出すと胸が締め付けられたように苦しい。
彼の顔を見ることが出来なくて、私は部活用のシューズを履いていない剣城くんの足と松葉杖の先を見つめていた。
「円堂監督から、次の試合にお前をフォワードとして出すと聞かされた時、それでいいと思った」
＿＿だとしたら、過信だ。
.
私は次第に河川敷の練習に行かなくなり、今まで何も言わなくても集まっていた部活後の自主練は、いつの間にか誰も集まらなくなってしまった。
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます！ 助かります……！ (2021年2月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます！ 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります！！ (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます！剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです！ (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春真 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月26日 12時
