4-14.キャプテン ページ14
「Aー！」
見ると、天馬くんが大きく手を振っていた。木枯らし荘にいた犬＿＿名前は確か、サスケだったか＿＿を連れている。
手を振り返すと、天馬くんはこちらに駆け寄ってきた。
「もしかして、必殺技の練習？」
「あ、いや……。
＿＿うん。全然、完成してないけど……」
天馬くんは「きっとできるようになるよ！」と励ましてくれた。
どこにその根拠があるのかはわからない。根拠なんてないのかもしれない。彼はただ雷門サッカー部のメンバーを全面的に信じているのだろう。
その信頼に応えられそうにないことが歯痒かった。
悔しくて下唇を噛む。
「……でき、ないかも…………」
天馬くんが心配そうに「え？」と私の顔を覗き込んだ。
暗い考え方しかできない自分が嫌いだ。こういう風に言えば天馬くんが心配して、元気付けてくれることがわかっていながら、言葉にせずにはいられない浅ましさが嫌いだ。
「……ごめん、何でもない」
このはぐらかし方さえわざとらしい。
天馬くんは「でも」と食い下がった。
「ほんとに、大丈夫だから」
「大丈夫に見えないよ」
何も言い返せなかった。
サスケの息遣いだけが聞こえていた。
「……剣城くん、みたいには……できない…………」
声を出すと同時に涙がこぼれた。
「剣城くんみたいに、チームの力に……なれないと思う……」
噛み締めて、押し殺して、それでも溢れる波が頬を伝った。一人の時は我慢できるのに、心配させたいわけでもないのに、天馬くんを前にすると変に感情をあらわにしてしまうことがあった。
サスケが不思議そうな顔で私を見ている。
「剣城みたいにならなきゃって、思わないで」
「……え？」
袖でめちゃくちゃに顔を拭いてから、天馬くんを見る。
「剣城の代わりとしてプレイするんじゃなくて、AにはAのサッカーをしてほしい。そうしたら、きっと俺たちももっと頑張れるから！」
剣城くんの代わりじゃない、私のサッカー。
「…………わかった」
そもそも、私と剣城くんはプレイヤーとしてまったく違う。彼のようになろうとする方が間違いだったのかもしれない。
私は私のプレイでチームの力になるべきだ。
「わかった。ありがとう、天馬くん」
天馬くんはいつもの笑顔を浮かべて言った。
「一回戦、絶対勝とうね！」
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます！ 助かります……！ (2021年2月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます！ 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります！！ (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます！剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです！ (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春真 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月26日 12時
