10-18.混乱 ページ18
雷門中のみんなの空気が変わる。先程までも緊張で張りつめてはいたが、今はもっと刺々しい雰囲気がある。
フィフスセクター、牙山、目をつけられた実幡中。
ふと、天馬くんたちのざわつく声が聞こえた。
何事かと思い見上げると、牙山と呼ばれた男性が大股でこちらに歩いてきている。足音が聞こえてきそうな歩き方に威圧感を覚え、思わず後ずさった。
牙山は黒いスーツを着込んだ大人を数人従えている。あの人たちも、もともとはフィフスセクターにいたのだろうか。
「やあやあ、雷門中の諸君！ また会えて光栄だ」
彼は芝居がかった仕草で両腕を広げた。
ピンと整えられた髭を撫で、襟元をぴっしりと正す。
「＿＿なんて言うとでも思ったか！！」
肌がビリビリと焼けるような声の圧。驚いて言葉も出ない。
牙山は目をカッと見開いて、こちらを押し潰すような声で叫んだ。
「ここで貴様らを倒し、フィフスセクターを復活させる！
フィフスセクターがサッカー界を＿＿いや、世界のすべてを支配するのだ！」
その声に呼応するかのように、スタジアムが大きく揺れ始めた。
ベンチにも観客席にもどよめきが広がっている。
「地震か！？」
「なんだ！？」
「見て、スタジアムが＿＿」
見上げると、空が近づいてきていた。
いいや違う、スタジアムが天に向かって伸びているのだ。
決勝戦を始めるために。
頭が痛い。
立っていられず、私はその場に膝をついた。
サッカーで世界を支配する？ そんなことができると、あの人は本気で考えているのだろうか？ にわかには信じがたいが、それでも雷門中のみんなは厳しい表情を崩していない。
あり得るのだ。サッカーで、世界のすべてを支配することが。
違う、という言葉が喉までせり上がっている。
サッカーは何かを支配するためのものじゃない。そんなのは＿＿
「サッカーが泣いてる……」
呟いたのは私だったか、それとも天馬くんだったか、いろいろな声がぐちゃぐちゃに混ざってしまい、もうわからなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 144人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春間(プロフ) - 匿名２号さん» コメントありがとうございます！ 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします！ (2022年3月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名２号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます！ 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります！ (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました！この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…！ (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます！ お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2021年3月14日 19時
