1-5.甦る想い ページ5
二人は一心不乱にボールを追いかけていた。無駄のない動きでボールを自由自在に操る剣城くんと、剣城くんからボールを奪おうと、さまざまな角度から切り込む松風くん。両者一歩も引かぬ攻防を繰り広げていた。
＿＿とても楽しそうだ。
二人は激しくぶつかりあいながら、笑顔でボールを追いかけていた。その表情が、姿が、心に強く訴えてきた。
“サッカーは楽しい！”
お腹の奥が熱くなって、何かがこみ上げてくる。吐き気ではない。それが涙だと気づく頃にはもう溢れていた。
慌てて腕で顔を隠す。いつからこんなに涙脆くなったのか。ずっと一人きりで部屋に篭っていたから、外からの刺激に弱くなってしまったのだろうか。
二人の表情と対照的に、私の心は沈んでいく一方だった。
やっぱり来なければよかった。
雷門中サッカー部はあのサッカー部とは違う。そんなこと見なくてもわかったはずなのに、見学に来たのは、浅ましくも自分がまたサッカーと関わる機会があると知りたかったからだ。
こんな姿を見せられたら、サッカーから離れられなくなってしまう。
見ていられなくてこっそりグラウンドから離れようとすると、葵ちゃんが声をかけに来てくれた。
「Aちゃん！ 来てくれてありがとね＿＿」
言葉が不自然に切れた。不思議に思って葵ちゃんを見ると、彼女は「ううん」と首を横に振った。
「帰り道気を付けてね」
「うん。またね」
見学時間はまだ残っていたが、私は雷門中を後にした。
.
リボンを外して机に置くと、私は制服のままベッドに飛び込んだ。
電気もつけず、カーテンも閉め切っているため部屋は薄暗い。
スカートを脱がなければならないとわかっているのに、なかなか起き上がれない。久しぶりに外に出て家族以外の人と話したから、疲れているのかもしれない。とりあえず靴下だけ脱いで床に落とした。
部屋に一人でいることには慣れていたはずなのに、誰かと一緒にいたあとではただ孤独であることをより深く実感するだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…（ ; ; ）更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました！ (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ！もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります！ (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月5日 11時
