1-2.落雷 ページ2
転校初日は授業はなく、正午には下校になっていた。配られた今年度の教科書を鞄にしまっていると、空野さんが「Aちゃんはどこに住んでるの？」と話しかけてくれた。
「えっと、北稲妻町。空野さんは？」
「葵でいいよ！ 北稲妻なら私も方向同じなの。一緒に帰らない？」
あまりにも嬉しい誘いに、すぐには言葉が出なかった。
「もちろん……！ ありがとう。葵ちゃん」
声が上ずったような気がするが、葵ちゃんは気にせずに「よかった」と笑ってくれた。
教室を出ようとすると、後ろから「葵！」と男の子の声がする。振り返ると、栗毛の男子生徒が立っていた。名前は確か、松風天馬くん。松風くんは私が葵ちゃんと一緒にいるのを見て、慌てて「いきなりごめん！」と軽く頭を下げた。
「俺も一緒に帰っていい？」
葵ちゃんがどうする？という顔でこちらを見る。断る理由もないので頷くと、松風くんは「ありがとう！」と笑顔を見せた。今度こそ廊下に出ようとすると、松風くんが何か思い出したように立ち止まった。
「剣城も一緒でいい？」
とてつもなく悪い意味で心臓が波打った。
こみ上げる動揺を必死で抑える。剣城というのはあの剣城くんのことか。松風くんと剣城くん、なんてアンバランスな組み合わせだろう。気の合う二人には到底見えない。
黙ってしまった私を見て、松風くんが何かに気づいたように「大丈夫だよ！」と笑って言った。
「見た目はちょっと怖いけど、悪い奴じゃないから」
「ねっ」と松風くんが振り返った先に、剣城くんが立っている。剣城くんは無言でこちらを一瞥した。ほんの一瞬目が合って、息が詰まった。蛇に睨まれた蛙ってこういうことを言うんだ、と妙なところで納得していると、葵ちゃんが「大丈夫？」と声をかけてくれた。
正直、怖い。何を考えているかわからないし、立って近くにいると身長も高く威圧感がある。けど松風くんはともかく、どうやら葵ちゃんも剣城くんと友達らしい。それに断っても後が怖い。
「大丈夫だよ」
そう言うと、松風くんは「じゃあ行こう！」と昇降口に向かって歩きだした。
靴を履き替えながら、松風くんが葵ちゃんに話しかける。
「葵、今日の集合って１４時だっけ」
「うん、そうだよ。第二グラウンド」
「わかった。ありがとう！」
何の話か分からず首を傾げていると、松風くんはにっこりと笑って言った。
「俺たち、サッカー部なんだ！」
昇降口の先に、青々としたフィールドが広がっていた。
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春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…（ ; ; ）更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました！ (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ！もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります！ (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月5日 11時
