桜前線 6【イナクロ】 (ページ5)

今日:12 hit、昨日:24 hit、合計:1,589 hit

235　悲しみの夜にページ5

その日の夜、ふと目が覚めた。水を飲みに行こうとすると、フェイも水を飲んでいた。側にはビッグもいる。

「フェイ」
「A」

私も隣で水を飲んだ。ある時、フェイは言った。

「少し散歩しない？今、歩きたい気分なんだ」
「いいよ」

彼の目は静かに闇を見ていた。しばらく歩いていると、フェイは口を開いた。

「ビッグと僕は＿同じなんだ。一人ぼっちになってしまったんだ」

フェイは一面の星空を眺めてビッグを撫でながら、ぽつりとそう言った。

「僕の親は、僕を置いて出ていった。なぜだかわからないけど＿多分僕のことが嫌いだったんだと思う。でも、ビッグは僕と違う。きっとビッグの母さんは天国でビッグを見守っている。だから、僕よりずっとマシ」

"僕よりずっとマシ"という言葉に、フェイの心の闇を感じた。彼にはどれほど辛い過去があるのだろう。そう思わずにはいられない。

「僕は一人だって寂しくはなかった。...僕にはサッカーがあったから。だから、前に進むって決めたんだ。僕にとってサッカーは全てなんだ」

フェイはビッグに向き直り、語りかけた。

「ビッグ。君はめげちゃダメだよ。前に進むんだ」
「ビー！」

流れ星を背景に、フェイに対して尋ねた。

「どうして、私にも話してくれたの？」
「えっ」

フェイは口籠った。彼は視線を逸らして、下を向いた。

「ロックスターが亡くなったあの時、君はビッグの側にいたからさ」

そう告げる声は小さかった。