267 フェーダ時代 ページ37
フェイはフェーダ時代の記憶を思い返し、淡々と語った。破壊の力に目覚めた幼少期、周りから気味悪がられたこと。噂は広まり、差別を受けるようになったこと。バケモノと呼ばれたこと。
「僕だって、こんな力持ちたくなかったんだ。他の人みたいに"普通"になりたかった」
親に捨てられ、孤独の中、兎のぬいぐるみと遊んでいたという。それが後のフェイの化身となる。ある日、SARUと出会う。彼がかけてくれる言葉は心に響いたと語った。
「SARUも一人ぼっちだったんだ。親から酷い仕打ちを受け続けて、ある日、力が暴走した。それで、絶縁されたんだ。フェーダの中でSARUが一番辛い過去をもっている」
フェーダに入ってからは、破壊活動を繰り返した。すべては自分たちを認めない社会に復讐するために。フェーダにいることで、自分の存在価値をようやく実感できたという。
「僕の仲間は若くして亡くなった。その時初めて、自分の寿命の短さに気付いたんだ」
SSCは超人的な能力をもつ代わりに、大人になる前に命が尽きてしまう。それが恐ろしくて堪らなかった。
「フェーダのメンバーは孤独な人の集まりだ。でも、同じSSCでも、ザナークのように自由に生きている人もいる」
「...俺がSSCだと知ったのは最近のことだがな」
「うん。SARUもそう言ってたよ」
SSCであることを否定され、復讐に燃えるフェーダにとって、SSCの枠に縛られないザナークの存在はアンチテーゼだったのかもしれない。
「SARUを助けてやりたいんだ。僕ももう長くはない。だから、全力で戦うよ」
「フェイ、＿」
話を聞いている最中、天馬が何か言いかけた。しかし、それは拓人くんによって止められた。何を言おうとしていたんだろう。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年3月4日 12時
