266 フェイを愛する人たち ページ36
「フェイは...フェイはうちの子どもやんね！」
その衝撃的な一言で、度肝を抜かれた。黄名子はフェイの子供？いや、でも、黄名子はまだ少女じゃないか。児童婚だとでもいうのか。
「黄名子は私がタイムジャンプによってフェイと同年代の少女の時代から連れてきた、紛れもないフェイの母親だ」
「急に菜花がサッカー部員になっていたのも、フェイの父親によって行われたインタラプト修正によるものだったのか」
「お父さんだって、あなたと別れて平気だった訳じゃない。ずっと心配していたやんね。だから支援者Xになったやんね」
話を聞いていると、時代が悪かったとしか言いようがない。SSCの遺伝子をもつ人間が生まれたばかりの頃で、そのSSCの子を差別や迫害から守れる社会保障制度がまだ存在しなかったのだろう。
「あなたは一人ぼっちなんかじゃなかったんよ。ちゃんとあなたのお父さんとお母さんに見守られていたんよ」
「そうなんだ...でも、今更そんなこと知らされたって、もう後戻りはできない。信じてくれたみんなを、僕は裏切ったんだ！僕にはもうフェーダを抜けても、行くところはない！」
「フェイの帰る場所はここにあるよ」
天馬は前に出て、そう言った。
「今までずっと一緒にサッカーやってきた仲間なんだ。フェイがさっきサッカーが好きって言った言葉は、絶対に嘘じゃない。だから一緒にサッカーを守ろうとしたんだろ。フェイの帰る場所はここなんだ。絶対ここなんだ！」
フェイは私たちに背を向けた。
「フェイ、待ってるよ」
彼はこくりと頷いた。フェイが立ち去った後、水鳥ちゃんはあることを提案した。
「どうせなら派手に迎えてやりてーよな」
「そうですね！それ、すごくいいと思います！」
「それならば、私が買い出しに行ってこよう。セントエルダの街については私が一番詳しいからな」
「ウチも行くやんね！」
準備は着々と進んでいった。そして、私たちはフェイが来るその瞬間を待ち続けた。
「フェイ、本当に帰ってきてくれるかな」
「大丈夫です。フェイは必ず帰ってきます」
「もう一度確認しますよ。扉が開いたら、『おかえり』ですからね」
そして、その時が訪れる。扉が開いた。
「「「「おかえりー！！！」」」」
クラッカーからリボンを放出させ、フェイを迎え入れた。彼は嬉しそうに笑っていた。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年3月4日 12時
