261 ラグナロク二回戦 [3] ページ31
メイアとギリスにシュートを打たせない。それが私の出した結論だった。攻める道筋を狭めることによって、相手を捕らえやすくする。
「オルカ、エイナム！中央へ！」
「はーい！」「...」
エルドラドメンバーは彼ら単体で見れば、極めて優秀なプレーヤーだ。上手く誘導さえできれば、歯車が回り始める。そう思った直後、ザナークがオルカのボールを奪い取った。
「どけどけどけぇ！！」
ザナークはボールを保持したまま前に突き進んだ。彼の放った力強いシュートはギリギリのところで止められてしまう。あともう少し決定力があれば、あのシュートは成功していた。惜しい。宝の持ち腐れだ。そこで前半が終了した。1点の失点で抑えられただけまだマシな結果だろう。ハーフタイムのミーティングにて、拓人くんが皆に訴えかけた。
「お前たちがお互いをどう思おうと構わない。だが、この試合、絶対に負けることはできないんだ。勝つためだ、俺とAの指示に従ってくれ！」
冷静さを取り戻した拓人くんを前にし、エルドラドメンバーの反応が変わった。少しだけチームがまとまった瞬間だった。
「俺はオフェンスに指示を出す。Aは引き続きディフェンスを頼む」
「オーケー」
話がまとまったところで、後半戦が始まった。
「アルファ・ガンマ・ベータ、いくぞ！神のタクト、アルファ！」
しかし、タクティクスは上手くいかない。そんな時、サカマキ監督が拓人くんを呼んだ。
「神童！」
「...なんだ！」
とうとう敬語を使わなくなったか。拓人くんの怒りがひしひしと伝わってくる。戻ってきた拓人くんに声をかけると、情報を羅列した。
「アルファ、38と48。ベータ、30と52。ガンマ、45と50...」
「...なんの数字？」
「わからない。そう言われたんだ」
それはなんの情報だろう。覚えるだけでも精一杯だ。試合が再開すると、拓人くんは思考と観察に集中していた。
(司令塔の機能が一時停止した...必要に応じて指示を出さなくては)
「ベータ！6番をマーク！」
「...別にいいですけどぉ〜」
「ガンマ！足元を狙え！」
「キャプテンが指示を出すんじゃなかったのかい」
途中でボールが場外に出た。そのタイミングで、拓人くんは私に話しかけてきた。
「わかったんだ。あのデータの意味が」
「え！」
「あれはボール保持率と走力だ」
この僅かな時間でよく気づけたものだ。凄い。流石拓人くんだ。
「3人とも！もう一度俺の指示に従ってもらう！点を取りたいんだろう？取らせてやる！」
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年3月4日 12時
