桜前線 6【イナクロ】 (ページ25)

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255　ラグナロク一回戦 [3] ページ25

前半終了間際のオウンゴールは会場に衝撃を与えた。観客席でも動揺の声が広がっていた。

「フェイはスパイだったのか...？」
「わからない。でも、今は敵になってしまった」
「一体どうなってんすか、この試合」
「フェイは味方だって信じてたド...なんでだド」
「...」

「フェイさん、裏切り者だったんですね」

ベータのその一言が耳についた。裏切り者。今の状況を見れば、そうとしか考えられないのはわかる。反論はできない。でも、そうじゃないと思う。フェイは本当にサッカーが大好きで、純粋で、正義感の強い人だ。ビッグと共に話したあの夜を思い出す。フェイは悲しげな目をしていた。過去になにかあったのは間違いない。でも、彼自身は悪人ではないはずだ。上手く言葉では言えないけど、フェイは純粋にサッカーが好きな少年なんだ。

迎えた後半戦、エルドラドチーム01は1人欠け、さらに不利な状態だった。

(剣城がキャプテンに選ばれた意味はなんだろう...)

それが鍵となるはずだ。話を聞くに、剣城のキャプテン経験は少ない。黒の騎士団のキャプテンをした経験があるのみ。剣城は人を動かす司令塔というよりは、指揮の下で優秀に立ち回る実行役に近い。剣城の強みは、周りの状況をよく見ていて、その場に応じて機転が利くところだ。

フェイをキャプテンとすることもできた。そうではなく、なぜ剣城なのだろう。
フェイがチームをさらに苦境に陥らせ、離脱することは予測できなかったはず。剣城が選ばれた理由がなにかある。

剣城と黄名子の化身アームド。剣城が上手く立ち回り、ノーマークの黄名子の化身シュートにより、エルドラドチーム01はようやく1点を返した。

(捨て身戦法でようやく1点...これは厳しいな)

全体的に選手が前に出ていて、得点しやすくなっている反面、守りが薄い。いつカウンターを取られてもおかしくはない状況だ。

ここで試合終了。勝ったのはチームザン。チーム01は希望の1点を残して試合を終えた。

(なぜ敗北したんだ...なぜ)

エルドラドチームはフェーダの情報を知らない。しかし、フェーダは私たちのプレースタイルに上手く対応しているような雰囲気がある。これは、情報格差による敗北と捉えて間違いないだろう。今思い返せば、フェーダの皇帝は私たちの様子を見に来ていた。それに、フェイを通じて私たちの様子を観察することもできたはずだ。未来の技術を使えば可能なのかもしれない。