桜前線 6【イナクロ】 (ページ24)

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254　ラグナロク一回戦 [2] ページ24

キャプテン兼エースストライカーの負傷は、エルドラドチーム01にとって大打撃だった。次に攻撃の起点となったのは、錦くん。彼はストライカーの素質がある人物であり、攻撃において十分な能力をもつ。

(しかし、攻撃に力を入れるのは果たして正しいのか...)

「攻撃は最大の防御」とはいえ、攻めることで寧ろ相手のペースに乗ってしまっている面も否めない。ザンに動きの意図を読まれている気がする。なんのための防御布陣なのか。FWに適性のある選手がどんどん欠けていく中、これ以上攻めるのは得策ではない。守りが得意な選手が多いのだから、今はひたすら自陣を守り、相手の動きを観察し、隙を見つけて攻めに入るべきだと私は思う。予想通り、ザンが先制点を決めた。やはり守りが薄くなり、点を取られやすい状態になっている。

鬼道監督は気付いているはずだ。エルドラドチーム01の悪手に。
鬼道監督はバカではない。最高のゲームメーカーであり、指導者だ。そんな彼がなぜ最善の手を打たないのか。または、打てないのか。SSCのメンバーは頭脳が人を超えている場合があると聞いたことがある。もしかすれば、異常に賢い選手がフェーダにいるのかもしれない。

よく見ると、ザナークの様子もおかしい。普段ならば、高い実力をこれでもかと披露しているのに、まるでザンに抑えられているようだ。

次々と得点を入れられる最悪な状況の中、天馬は必死に応援している。観客席の隣のブロックなのに、ここまで聞こえる大きい声だった。

「みんなー！！焦らず、一点ずつ返していこう！！」

しかし、その声はグラウンドまでは届いていないようだ。どれだけ大きな声だったとしても、エルドラドチーム01選手の耳には届かないことだろう。実力差に加え、この点差を受けて、敗北の二文字しか頭にないはずだ。

試合進行中、奇妙なことが起こった。フェイが立ち止まり、頭を抱えた。その様子は昨日彼が頭を抱えて苦しんでいた様子と酷似していた。試合は硬直した。奇妙なのはフェイの様子だけではない、ドリブル中に立ち止まったフェイからボールを奪わないザンの選手もだ。なぜ奪わないのだろう。フェイはもしかしたら、昨日のようにこれから倒れてしまうかもしれない。そう思った直後、フェイは驚きの行動に出た。

突然のオウンゴール。

「な、...」

驚きが会場に広がる。世界の命運を決めるこの大事な試合で、自らのチームの首を締めるなんて。