桜前線 6【イナクロ】 (ページ23)

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253　ラグナロク一回戦 [1] ページ23

試合当日が訪れた。会場にはフェーダを示すDNAのマークが至るところに刻まれているものの、この場にいる人々のほとんどはエルドラドを応援している。圧倒的エルドラドコールに包まれていた。今日は鬼道監督のチームが初戦に出る日だ。私たちは観客席からその様子を眺める。当然ながら満員。全世界から注目を浴びている。フェーダの挑発的とも言えるセレモニーが終わると、会場は緊張感に包まれた。

試合直前になって、初戦の相手がローブを脱ぎ捨てた。

「あれは...ザナーク！？」
「なっ、...」

動揺するガンマの声が前方から聞こえてくる。ガンマにとっては因縁の相手だろう。よく見ると、ザナークがキャプテンであるようだ。ザナークが出てくるとは思わなかった。彼もまたSSCの一人ということなんだろう。

未知の能力のチームを相手に、キャプテンの剣城がどのように皆をまとめるのかが鍵となるだろう。いや、布陣的にはフェイが司令塔なのかもしれない。鬼道監督は先の先を読む人であり、適切に指示を出す人であるから、そういった意味では安心感がある。

こちらと相手のチーム名が公表された。名前は「エルドラドチーム01」と「ザン」。とうとう試合が始まった。

「頑張って...剣城」

キックオフ早々、いきなり錦くんと剣城がミキシマックスした。

(初手ミキシマックスか...悪くない。いや、それが最善ともいえる)

未知の相手と戦う時は、警戒しすぎるということはない。相手もこちらを警戒している可能性がある。必要以上に慎重にならず、力を出し惜しみせずに、機を逃さないことが重要だ。

驚くことに、ザンは全く動かなかった。舐めプが過ぎる。剣城が積極的にシュートをし、その度に止められる。動きから、剣城の焦りが手に取るようにわかる。

(コントロールされている...)

必ずシュートを止め、好きにプレーさせることによって、絶対に破れない壁だということを脳に刷り込まれている。これはマズい流れだ。プレー中の空白時間というのは、変なことを考えるきっかけになり得る。その不安が焦りに繋がる。プレースタイルの乱れとなる。

悪い予感は的中した。剣城は集中的に攻撃されている。「残忍」の「残」がチーム名となったのではと思う程、一方的な暴力で剣城は倒れた。

「...！剣城！」

さすがにこの展開は鬼道監督にも想定できなかったらしい。試合の流れが硬直している。サッカーを用いず、まさか普通に殴られるとは思っていなかったのだろう。