桜前線 6【イナクロ】 (ページ2)

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232　ケツが割れとるっすページ2

窓から恐竜の姿が見える。動いている、本物だ。想像よりも大きい。

「恐竜の体は効率的に酸素を取り入れることができるので、あれだけ巨大になったんですよ」
「信助は本当に詳しいね」
「えっへん！」

立ち上がって恐竜を眺めるフェイは言った。

「多様性のある集団の中で、たまたま生き残った集団が存在し続ける。進化が生き物を作ったんだ」
「進化って大事なんだね」

進化といえば、フェーダの存在を思い出す。エルドラドに敵対するその組織は、未来において進化した人間だと聞いた。エルドラドは進化を受け入れることも必要なんじゃないか、とその時なんとなく思った。未来の事情は知らないけど。

ワンダバスイッチによって服装が切り替わると、皆が声を上げた。

「身を守れそうな服ではないぜよ...」
「いや、これで行く！諸君、出発するぞ！」

私は黄名子ちゃんと同様に、ちゃんと女子用の服装になっていた。

「剣城やAちゃんは、恐竜好きやんね？」
「興味はあるけど、すごく好きって程じゃないかな」
「好きというか、昔、兄さんと博物館に化石を見に行ったことがあるだけだ」

進んだ先にはなんと人間がいた。この時代には人間は誕生していないはずだけど。さらに驚くことに、彼とは会話が成立した。

「オラ、トーブっていうんだぞッ！おめッ、名前は？」
「て、天馬」
「トンマ！うちに来い！おめーらもついてきていいぞ！」
「、てん」

天馬が天馬だと訂正しようとしているのを完全にスルーし、凄まじい速さで進んでいくトーブ。私たちは懸命に彼についていこうとしたが、体力や身体能力の差はすぐ浮き彫りとなった。最後尾で狩屋とともに走っている時、途中で足元が崩れそうになった。

「ひっ...」
「うぉあっ、あっぶねー！」

ギリギリの綱渡り。狩屋が大きく口を開けて驚いていた。

みんなは凄まじい速度でどんどん進んでいく。それについていくのが必死だった。道中では恐竜の上を渡って進んだり、川を渡るために恐竜に木を倒してもらったり、恐竜に岩を崩してもらったり、いろいろと恐竜には助けられた。ようやくトーブの家へ辿り着いた。

「これがオラのトーチャンだ！」
「カラカラァ！」
「わあ！ケツァルコアトルスだぁ！」
「なんじゃ？ケツが割れとるっす？」
「...ケツァルコアトルスだ！」

関ジャニ横山の空耳を彷彿とさせる、錦くんの空耳。つい吹き出してしまった。もうそれにしか聞こえなくなってしまった。拓人くんのツッコミも素晴らしい。