桜前線 4【イナクロ】 (ページ8)

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141　謎の少年、再びページ8

サッカーをした後、河川敷の階段に座り、一緒に茜色の空を仰いだ。夕方の景色はどこか虚しさを感じさせられて、冷えた風が吹いていて、それはまるでサッカーの熱を失ったサッカー部のみんなみたいだ。

「一体どうなってるんでしょう。サッカー部がなくなっただけじゃない、みんなサッカーのことを忘れてしまっています」
「...うん、なんでみんなサッカーのこと忘れちゃってるのかな」
「なんで、みんなサッカーのこと、あんなに好きだったのに...なんでサッカーを忘れられるんだよ」

隣から涙声が聞こえてきた。つい自分の目も潤む。行き場のない気持ちだけが心に残っている。またみんなとサッカーやりたいと思っていたのに、どうして。どうしてサッカーを忘れているんだろう。

「サッカーが...消えた」

そう天馬が言葉を漏らした時、背後から突如声が聞こえてきた。

「NO。サッカーの消去は不完全だ」

ハッとして振り返ると、そこにはあの謎の少年がいた。

「松風天馬。これよりお前からもサッカーを消去する」
「サッカーを消去？」

天馬も振り向いて立ち上がった。私は天馬を守るように前に立ち、正面を向いたまま、天馬に向けてこそっと告げた。

「天馬、この人ヤバいよ。逃げた方がいい」
「え？逃げるんですか」
「NO。逃げることはできない」

聞こえてたのか。あの少年は地獄耳らしい。

「あなた、誰？なんのつもり？」
「私はアルファ。我が使命はサッカーの消去。残る痕跡は松風天馬と、佐倉Aのみ」
「痕跡？俺と先輩だけ？...まさか、お前のせいなのか？雷門が変になってるのは」
「そうだ」
「!?!」
「...!? ...許せない、サッカーを消すなんて！みんなを元に戻せ！サッカーを返せ！」

サッカーが奪われたのは、やはりこの謎の少年のせいだったか。

天馬は感情的になり、アルファと名乗る謎の少年に向けて問い詰めた。すると、アルファは綺麗に揃えた手で制止した。

「NO。我々の行うべきはその逆。サッカーの完全消去」

まただ。またあの妙なボールが出てきて、赤い光を纏い始めた。ボールは天馬の方へ向かい、その拍子に天馬が足を踏み外した。気づけば天馬とアルファの姿は忽然と消えていた。もしかして、私、取り残されてしまったんじゃ。