140 唯一の記憶保持者 ページ7
とうとう夏休みが終わり、学校生活が再開した。しかし、やはりサッカー部は依然として存在しないままだった。寂しい気持ちで夕暮れの中サッカー棟を見つめていた時、ふと階段下で明らかに落ち込んだ様子の天馬が見えた。もしかしたら、と希望が湧き上がる。急いで階段を降り、声をかけた。
「天馬！」
「...A先輩」
天馬は涙声だった。さっきまで泣いていたのかな。
「先輩は俺のこと、覚えてるんですか...？」
「当たり前じゃん！っていうか、天馬も私のこと覚えてるの？」
「もちろんです！」
「サッカーのことも？」
「はい。でも、みんなサッカー部がないって言うんです。もしかして、先輩も？」
「私も私も！いや、ほんとに、サッカー部のみんなさ、サッカーのこと忘れてて絶望してたんだよ」
「葵は書道部とかわけわかんないこと言うし、信助は卓球のラケット持ってました。なんでサッカーのこと忘れてるんだろうって、ずっと思ってました」
ようやく出会えた。雷門中サッカー部のことを覚えている人。私たちは正面から抱き合い、涙を流し合った。
「「よ、良かった〜〜〜！！！」」
話を聞くと、天馬も雷門中でサッカー部をそこら中 探したらしい。私と同じだ。
「天馬は今まで沖縄行ってたんだっけ」
「沖縄もですし、全国を回って子供達にサッカーを教えていました。俺、豪炎寺さんが設立したサッカー教育プログラムに参加してたんです。夏休みが終わって登校したら、サッカー部がなくなっていました」
「そういうことだったんだ」
私はサッカーボールを持ちながら、天馬に提案した。
「ね、サッカーしない？夏休みの間はずっと一人でボール蹴ってたから、すごく今、誰かと一緒にサッカーしたいんだ」
「はい！」
雷門中には空いているグラウンドはないので、いつもの河川敷に行くことにした。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
