桜前線 4【イナクロ】 (ページ6)

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139　夏休みの過ごし方ページ6

拓人くんにそれっぽくサッカーの話を振ってみても、サッカーに関して解像度の低い答えで返される。それが二度三度あると、とうとう諦めの境地に至った。彼が興味を示したのは音楽の話で、特にピアノについては熱量が高かった。彼は音楽部に入っているらしい。やはりサッカー部ではないそうだ。

「音楽部といっても、オーケストラ部と同じようなものなんだ。Aも今度見学に来ないか」
「ああー...うん。また今度」

オーケストラというと、弦楽器と管楽器。たしかに興味はあるけど、今はサッカーをしていたい。この世界での、超次元サッカーが好きだから。拓人くんは椅子から立ち上がり、背を向けた。

「じゃあ、勉強してくるよ」
「これから？」
「ピアノと勉強は疎かにするなと言われているんだ」

パタンと扉が閉まった。もう寝る時間だというのに、これから勉強だなんてすごいな。夏休みだというのに、試験前の医学生みたいな生活をしている。

私はというと、日中は暑い中外に出る気になれず、冷房の効いている部屋でアイスを食べながらダラダラゴロゴロとする日々を続けていた。バラエティ番組を見たり、今話題となっている野球の日米親善試合を見た。夕方になって涼しくなると、サッカーボール片手に河川敷へと向かい、一人でサッカーをしていた。

じんわりと感じる孤独感。それでも、サッカーボールだけは自分に寄り添ってくれた。寂しい気持ちを満たすように、サッカーボールと戯れ続けた。

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