175 島の散策 ページ42
そこは地蔵広場だった。このお地蔵さんはサッカーの神様と聞いた覚えがある。そして、その近くには見覚えのある姿がいた。天馬が駆け寄る。
「シュウ、久しぶり！さっきは助けてくれてありがとう」
「間に合ってよかったよ」
彼はサッカー禁止令の影響を受けていなかった。しかし、サッカーが大変なことになっているというのは既に認識している様子である。
「僕は、君たちに化身アームドのことを伝えに来たんだ」
「えっ。化身アームドのこと知ってるの!?」
「ああ。この島で化身アームドを掴んでほしい。サッカーの神様が力を貸してくれるはずだよ」
「シュウがサッカーの神様だったりして！」
「まさかぁ」
「よーし！みんな、やりましょう！化身アームド！」
張り切る天馬を止めたのは葵ちゃんだった。
「待った！」
「なんだよ葵〜」
「さっきのバトルでダメージ受けすぎ。無茶しないで今日は休んで」
「だな。化身アームドって相当消耗しちまうんだろ？さっきAが倒れたように、お前も倒れるかもしれねえ。今日は回復に努めな」
「体調管理もマネージャーの仕事...」
以前泊まった場所で、今回も滞在することとなった。徐々に辺りが暗くなる。私と剣城は近くを歩いていた。もし迷ったとしても、剣城なら帰り道がわかる。その点、頼りにしていた。
「自然っていいね。良い空気」
「本当ですね」
自然豊かなゴッドエデン。東京のような都会にはない環境だ。
「＿なんか、疲れちゃった」
岩に座り、そのまま倒れ込んで空を眺めた。まだ空は完全に暗くなっていないのに、月が見える。気持ちの良い冷たい風が肌を撫でた。
「今日は先輩らしくなかったですよ」
「そう？」
「いつもは冷静なのに」
座る剣城と目が合う。ぱちりと瞬きした。
「...そういう気分だったの」
「そうですか」
剣城はぽつりと言った。
「焦ってませんか」
核心を突く一言だった。内心動揺する。
「...そうなのかも。みんな、優秀だから」
「先輩は優秀です。俺は先輩のこと、尊敬しています」
「......もうっ、そんなにおだてても何も出てこないよ」
「本心ですよ」
剣城は穏やかに微笑んだ。
「誰よりも努力しているじゃないですか」
「...そんなこと、ない」
「先輩のサッカーへの想いは十分伝わっています」
起き上がって、剣城の方を見た。
「サッカー、本当に守れるのかな」
「守りましょう。きっと守れます」
「そうだね、...うん」
ゆっくりと浮き出てきた星空を共に眺めた。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
