138 嫌な確信 ページ5
変な顔をされ、「じゃあ」と言うと通り過ぎて行った。その彼の後ろ姿が完全に見えなくなるまで、その場に立ち尽くした。照りつける太陽の下、しばらくそこから動けなかった。
「ど、どどどういうこと...？」
クラクラしてきた。いや、私はまだ諦めないぞ。こうなったら、一人でサッカーの練習をするしかない。そう思い、河川敷へ向かった。その道中で剣城とすれ違ったので、迷わず声をかけた。
「剣城！ちょっと聞きたいんだけどさ＿」
「？...どなたですか」
"どなたですか"？
(演技...？にしちゃ様子がおかしいな)
自分自身を指差して、名乗った。
「佐倉A」
「はあ」
「...え？なに冗談言ってるの。私だって私」
「佐倉さん、でしたっけ。俺に何の用ですか」
「サッカー部の活動場所って変わったの？どこか知らない？」
「サッカー部？」
「ええっ？雷門中のサッカー部だよ？剣城サッカー部じゃん」
「雷門にはサッカー部なんてないですし、そもそも俺部活入ってないです」
「...ええ？」
「サッカーなんてもう古いですよ。今は野球でしょ」
「野球ゥ？」
涼しい顔をして、そのまま横を通り過ぎて行った。剣城を引き留める言葉が咄嗟には出てこなくて、複雑な思いが募った。私は確信した。なにかがおかしい。なにかが狂っている。
今までの状況を整理してみよう。まず、謎の少年が「インタラプト補正」をした。その後、拓人くんは気力を失い、サッカーを「廃れたスポーツ」と表現した。さらに霧野くんは雷門中にはサッカー部がないと言い、自分がサッカー部員ではないと明言した。最後に、剣城は私に対して「どなたですか」と言い、霧野くんと同様のことを言った。
インタラプト補正とは何だろう。何が起こったのか問いただしたところ、謎の少年は「神童拓人からサッカーを奪った」と言っていた。インタラプト補正は、拓人くんがサッカーの熱を失ったことと関係しているのかもしれない。でも、なんで私はまだサッカーが好きなんだろう。謎の少年は私からもサッカーを奪うと言っていたのに。
雷門中にはサッカー部がないということ。そして、剣城が私を知らないということ。
もしみんなが演技でないなら。信じたくないけど、それが事実ならば。
今、とんでもない事態に陥っているのかもしれない。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
