137 廃れたスポーツ ページ4
拓人くんが最近変だ。気力がなく、ぼんやりとしている。そんな彼を元気付けるため、サッカーに誘った。しかし、驚くことに彼は断った。
「サッカーなんて...随分前に廃れたスポーツだろ」
言葉を失った。拓人くんがそんなことを言うなんて。あれほどサッカーを愛し、自由なサッカーを取り戻すため天馬とともに立ち上がったというのに。
「サッカーは廃れてないよ」
「Aはそう思っているだろうが、一般的にはサッカーは廃れていると言われているんだ」
どこか根本的なところで認識の違いがある。そう感じずにはいられなかった。拓人くんは右手にペンを握ると、勉強を始めた。仕方ないので、一人でサッカーをしに行くことにした。夏休み中のサッカー部での活動はたしか自由参加だったはずだ。誰か一人くらいはグラウンドで練習していることだろう。そう思い、グラウンドに着くと、そこでは野球をしていた。
「＿＿＿？」
なんでサッカー部のグラウンドで野球してるんだろう。ぽかんと口を開けて眺めた。サッカー棟に向かうと、その場所はバスケットボール部、バレー部、新体操部に使われていた。夏休み中だから、違う部活が一時的に利用しているのかな。
サッカー部の活動場所が知らぬ間に変わっていたらしい。雷門中の敷地内をくまなく探索したものの、サッカー部の活動場所は見つからなかった。雷門中の敷地から出たところで、私服姿の霧野くんが歩いていた。
「霧野くん！」
「Aか」
よかった。サッカー部員がいた。
「どこでサッ「今から図書館に行くところなんだ。一緒に行かないか？」
霧野くんはこれから図書館に行くらしい。今は夏休みだから、雷門中の図書館は閉まっているのだろう。
「えっと...ごめんね。私は雷門中へサッカーしに来たんだ。それで、サッカー部の活動場所知らないかな？色々探し回ったんだけど、全然見つからなくて」
「...？」
霧野くんは不思議そうな顔をしている。
「雷門中にはサッカー部なんてないぞ？」
「え？」
顔を見合わせる。
「...？」
「...？」
束の間の沈黙。
「雷門中に...サッカー部がない？」
「ああ。サッカー部があるなんて聞いたことがない」
「えっ、ていうか、霧野くんサッカー部だよね？私と同じサッカー部員でしょ？」
「＿何を言ってるんだ？俺はサッカー部なんて入っていない」
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
