159 サッカー禁止令施行 ページ26
翌日、血相を変えた拓人くんが現れた。肩を揺さぶられているけど、昨日夜更かししたからまだ寝ていたい。今日は休日のはず。まだ寝れる。
「A、大変だ。起きてくれ」
「んん？...ふわぁ、まだ...眠いから寝る。おやすみ」
「もう昼だぞ。というか、それどころじゃないんだ。政府が国会でサッカー禁止令を可決した」
「さっかー禁止令...＿サッカー禁止令!?!?」
バッと飛び起きた。
「サッカーが法律で禁止されたってこと？」
「ああ。詳しいことはまだわかっていないんだが、どうやらそういうことらしい。まずはテレビを見てくれ。どの番組もその話題を放送している」
「う、うん」
拓人くんがリモコンをテレビに向けた。画面が点く。大きなテロップで"サッカー禁止令 本日より施行"の文字が出ていた。
『影響は国内に及びます。全国のサッカー部に対して廃部の措置が執られます』
『あの試合は酷すぎましたからねえ。こうなるのは仕方ないですよー』
『日本代表は世界の恥です！アメリカとの友好関係が崩れる一歩手前ですよ。戦争に発展しかねません』
外に出ると、たすきをかけた政治家がメガホンを使ってサッカーの悪を市民に訴えていた。
「野蛮で危険なスポーツ！サッカーは禁止されました！ボール、ユニフォーム、スパイクなど、サッカーに関する物をお持ちの方は速やかに処分してください！」
消防隊が火を囲み、その中にサッカーに関する物を投げ入れる異様な光景。絶句した。
「信じられないな」
「一体どういうこと...」
家に戻り、もう一度テレビを見た。なぜサッカー禁止令が施行される事態になったのかの概要を問題となった試合のビデオを紹介しながら番組で解説していた。
「一ヶ月前の日米親善試合が暴力行為で中止となったのか。アメリカ代表の殆どの選手が大怪我をしたのなら、それはたしかに国交問題に繋がるな」
「おかしい。私の記憶だと、日米親善試合は野球の試合だったんだけど」
「Aと語り合って、楽しく試合を観たと思うんだが」
「その時たっくんは勉強してたと思うんだけど。サッカーにも興味なさそうだったし。...あれ？でも、一緒に観た気もしなくもないな...」
記憶がこんがらがっている。いや、今はそれどころじゃない。サッカー禁止令なんておかしい。こんなことが起こるなんて変だ。
「サッカー棟に行こう。みんなも集まっているかもしれない」
「うん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
