桜前線 4【イナクロ】 (ページ23)

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156　vs プロトコル・オメガページ23

プロトコル・オメガとの試合が再び幕を開けた。この素早いパスにも段々と目が慣れてきた。初見の拓人くんは最初こそ唖然としていたが、驚きの適応力で流れについていけていた。私は慣れるまであれほど時間がかかったし、まだ十分にはついていけていない。それなのに、拓人くんはこの僅かな時間でボールをカットできるようになるなんてすごいな。

優一さん、アルファ、天馬が化身アームドを成功させたのを見て、自分も試みた。しかし、敢えなく失敗した。

(私も化身アームド...やりたい...)

特訓あるのみだ。いつかは成功させてみせる。

そう思った直後、優一さんの周りに大きなオーラが現れた。ワンダバがベンチから優一くんに銃を向けている。他方、ワンダバのもつ銃の先には弟の剣城もいた。この場所にはいないのに、まるでそこに存在しているかのような光景だった。突如として、優一さんはムキムキの青年へと変貌を遂げた。

「うおおおお！！！決めるぞ、京介！！」

優一さんが放ったデスドロップは見事ゴールを決めた。結果はチーム雷門の勝利だった。アルファたちプロトコル・オメガは青い光に包まれて撤退した。

「ミッション・コンプリートだね」
「これで正しい歴史に戻るのかな」
「うん。戻るはずさ」
「これで...俺の役目が終わった」

優一さんの周りには黄色い光が現れた。あれは、アーティファクトが消滅した時の光に似ている。エラーである優一さんの存在はこれから消滅するのだろう。その光景を見ながらワンダバがコメントした。

「正しい時間の流れにインタラプトが修正されたことの証明だな。彼は存在した歴史とともに消滅するんだ」
「存在した歴史とともに...」

存在した歴史まるごと消滅することの重大さは計り知れない。今まで優一さんが過ごしてきた人生そのものが消えてしまうのだから。楽しかった出来事も、悲しかった出来事も、すべて歴史ごとなかったことになる。

「時間のようだな。ありがとう」

そう言って、優一さんは消えた。キラキラと輝きを放つ粒が完全に消えるまで、チーム雷門の一同は彼を見送った。