155 あの事故の日へ ページ22
翌朝、サッカー棟に繋がる橋の下で天馬たちと合流した。隣には拓人くんもいる。優一さんは一つのサッカーボールを両手に持っていた。思い出の詰まったそのボールをアーティファクトとするらしい。天馬は私の方を向いて報告した。
「先輩、昨日剣城は来たんです」
「え、来たの？本当に？」
「はい」
驚いた。この世界の剣城はてっきりもうサッカーはしないものだと思っていた。
「天馬くんが京介に働きかけてくれたんだ。お陰で京介と最後にサッカーができた。もう悔いはないよ」
「優一さん...」
ある時、車内からフェイが顔を出し、手を振った。今までサッカー部のみんなを待っていたけど、すぐに出発しないと歴史の改変ができなくなる恐れがあるという。優一さんの一声で皆はTMキャラバンに乗り込んだ。乗り込む時、拓人くんは驚いていた。
「これがタイムマシンか...」
「イナズマTMキャラバンって言うんだよ」
「へえ。そうなのか」
タイムマシンはワープし、6年前に到着した。タイムマシンでワープするのは3回目だから、段々ワープの感覚に慣れてきた。
「ここが過去...」
「間違いない。ほら」
優一さんが指を差した先には、2人の幼い少年がいた。より幼い方の少年が蹴った先には一本の木があった。ボールが高く蹴り上げられ、宙に浮いた瞬間、世界が止まった。灰色に包まれたのである。木の前にはアルファがいた。彼の登場に呼吸が止まる。一気に緊迫感が増した。雷門のみんなからサッカーを奪ったあの少年は正直恐ろしい。心の中で不安が渦巻く。その時、優一さんが2人の幼い少年を守るように、アルファの前に立ち塞がった。
「やめろ。手を出すな」
「こいつが戦う相手なのか」
「そう。奴らはプロトコル・オメガの一人、アルファだよ」
突如としてアルファのボールは青い光に包まれ、その光は増していった。
"ムーブモード"
その光に吸い込まれていく。移動した先は雷門中のサッカー棟 グラウンドだった。
「お前たちのサッカーが葬り去られる場所だ」
「受けて立つさ。そのために来たんだからね」
フェイが指を鳴らすと、デュプリが出現した。前回はテンマーズとしてだったが、今度はチーム雷門として試合に臨むことになった。正しい歴史を取り戻すための試合がとうとう始まる。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月22日 1時
