イナイレ乙女ゲーム「転生姫と4人の王子」 (ページ10)

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第10話ページ10

先ほどの怪しげな人物は、私を殺そうとしたのだろうか。剣城が助けてくれなければ、私は今ごろどうなっていたのだろう。そう思うと、恐怖で足が竦む。胸がキュッとなり、床に座り込む。その時、ドアの向こう側から声が聞こえた。耳を澄ませると、それは拓人王子の声だった。

「姫。おられますか」
「はい。います」
「ご無事でしたか。騒ぎがあったので、心配になり来たのですが安心しました。どうか開けて頂けませんか」
「開けたいのは山々なのですが、執事から扉を開けるなと言われているのです」
「ですが、姫がご無事なのかこの目で確かめたい。それに、姫の側にいたいのです」

選択肢が出てきた。
▽扉を開ける ▽扉を開けない

「扉を開けない」を選択する。

「…ごめんなさい。扉を開けることはできません」

そう言うと、ぼそりと声が扉越しに聞こえてきた。その声は酷く淡々としていた。乾ききった声だった。感情は篭っていない。

「それは残念」

以降、彼の声が聞こえることはなかった。気配も感じない。どうやら立ち去った様子だった。

そして画面が暗転してメニュー画面が出てきて初めて、私の意識は現実世界へと戻った。ゲームの中の世界は視界が主観的なので、没入間があり、どうしても現実と混同してしまう。

「え…驚きの展開すぎる」

乙女ゲーで命を狙われることなどあろうか。いや、滅多にないだろう。

なぜ命を狙われたのか。そして、神童はなぜあのような絶妙なタイミングで部屋に訪れたのか。その真相はまだわからない。しかし、様々な陰謀があの世界で渦巻いているのは理解できた。

「…今日寝れるかなぁ」

あまりにも衝撃の展開、そして恐怖の余韻で今夜は寝られそうにはなかった。結局、その日眠ることができたのは深夜2時だった。