第9話 ページ9
パーティーが終わり、執事の剣城に付き添われながら自室へと向かった。未成年ながらパーティー中にお酒の入ったお菓子を間違って口にしてしまったからか、少し頭がふわふわとする。だが少量だったので、このふわふわとした感覚は思い込みに過ぎないのかもしれない。
「楽しかったー！」
「それは何よりです」
「剣城も楽しかった？」
そう問いかけると、彼は落ち着いた振る舞いをしながら、困ったようにフッと笑い、返答した。
「姫様の楽しそうなお顔を拝見し、俺も楽しかったです」
「え！嬉しい。というか、剣城が笑ったの初めて見たよ」
「そうですか？」
「うん。クールなイメージあったからちょっと意外かも」
「俺でよければ、いつでもお見せしますよ」
その言い方は大人びていて、囁くような声だった。その低く甘い声が瞬時に私の体に響き、全身が熱くなる。私の心臓はドキドキとしていた。その時だった。彼によって私は壁に押し付けられた。状況が理解できずにいると、執事の剣城は声を張り上げた。途端に緊迫感が漂う。
「誰だ！」
ふと壁を見ると、剣城の腕には小型の斧が刺さっていた。そして物陰に怪しい人がいるのを見逃しはしなかった。しかしその影は数秒後に消えてしまう。
「…っ」
彼の腕から赤い血が垂れる。しかし彼はそれを全く厭わずに、私を安全な場所へと移動させることを優先した。早足で部屋に着き、彼は私に言う。
「俺は今から警備に連絡し、不審者を確保しに行きます。姫はここから絶対に出ないでください。約束できますか？」
「う、うん」
「それを聞けて安心しました。では行ってきます。俺が部屋を出たら、内側からも鍵をかけてください」
「待って」
私は剣城の袖を掴み、彼を引き留めた。恐怖で立てず、その場で座り込む。
「その傷」
「問題ありません」
「傷を直さなきゃ。血が出続けてる。それに…すぐに犯人を探せなかったのも、私の安全を確保しようとしてくれたからだよね。ごめんなさい」
そう言うと、執事の剣城は私と同じ目線になるため屈み、そして優しく言った。
「姫をお護りするのが俺の役目ですから。俺は大丈夫です」
彼は痛みに耐えるような表情をほんの一瞬見せたきりで、全く動じなかった。そして彼は部屋を出て、外から鍵を閉めた。私は少し考え、そして内側から鍵を閉めた。
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作者名：充滞 | 作成日時：2022年11月16日 17時
