イナイレ乙女ゲーム「転生姫と4人の王子」 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,772 hit

第14話ページ14

寝る前にヘッドギアをつけて寝転び、物語を再開した。すると、視界には朝の日差しとともに風丸が見えた。彼は焦り心配するような表情で私を一心に見つめていた。左目を覆う彼の前髪がふわりと動く。

「姫、姫」
「風丸くん」
「お怪我はありませんでしたか」

選択肢が出てきた。

▽頷く ▽腕を叩く ▽泣く
「腕を叩く」を選択する。

「全く問題ないよ！ほら、こんなにピンピンしてるし！」

二の腕をバンバンと強く叩いて無事をアピールする。しかし、その瞬間にズキッとした痛みが全身を襲った。その瞬間に叩いた部位からじわりと血が滲む。

「い””””ッ…！」

その瞬間、風丸の顔色が変わる。途端に彼の表情が切り替わった。

「なに、この痛み…」

ゲームだというのに、プレイヤーには痛みが直に感じられる。痛覚も再現できるのか、このゲームは。あまり良くないシステムだ。もしこのゲームで腹を刺されてしまったら、同じような痛みが再現されるのだろうか。溜まったものではない。

「もしかしたら昨夜の事件で肌が切れてしまったのかも」
「やはり怪我をされていましたか。傷口をお見せください」
「でも、見せるには服を脱がなきゃ…」
「服を脱がずに治療する方法がありますが、試されますか？」
「え？そんな方法があるの？」

その瞬間。ベッドの横に立っていた風丸は、ベッドで座る私の顎を親指と人差し指でくいっと上げた。真正面に風丸の顔があって、それが近づく。彼の眼差しは虜にされそうなくらいに優しく、気づけば互いの唇が触れ合っていた。彼の深い茶色の目は私から視線を離すことがなかった。突如の事態に動揺・混乱した私は完全に硬直し、しばらく動くことはできなかった。

「はは、びっくりしましたか？」
「な…＿な…＿」
「姫をお護りするため、執事には強力な能力が備わっているのです。その一つは、治癒能力なのですよ」
「ちゆのうりょく」
「この口づけ一つにより、簡単な傷や病気なら治ります。ほら、もう傷は治ったはずですよ」
「嘘！？」

信じられなかった私は一目散に上の服を脱ぎ、傷口を確認した。たしかに傷口は塞がり、流血は止まっている。風丸の方を見ると、赤らめた顔を片手で覆い、目を逸らしていた。思考が止まる。

「…え？ッあ！」

あられもない姿になっていたことに今更気づき、急いで自分の体を毛布で隠した。この時からだろうか。私が風丸を男性として意識し始めたのは。