王者の咆哮【イナイレ】 (ページ7)

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その日は音楽の授業があった。バイオリンの課題曲を各自で練習し、最後は皆の前で披露するといったテーマであった。今日は練習日である。まずは弓の毛を張り、松脂を弓元から弓先まで満遍なくつけ、チューナーを楽譜台に置いてチューニーグをする。皆の美しいバイオリンの音が一斉に響いた。そして私は姿勢を整えて、バイオリンを弾き始めた。

幼い頃に、京極先生という師から帝王学を学んだことがある。その際、簡単にではあるがバイオリンについて教わった。彼はバイオリニストではないが、かなりの腕前をもっていた。つい数日前のことのように、昔のことを思い出す。あれは、冷たい風が吹くようになった秋。紅葉した木々が葉を落とし、閑散としていた日のこと＿＿

『基礎というのは軽んじられることが多々ありますが、基礎こそ最も大切なものなのです。わかりましたね？』
『はい』
『そう、ビブラートは力が入りすぎると幅が小さくなります。体の力を抜いて、ゆっくりと』

『おや、■■さん。どうされたのですか』
『あ、■■君』
『こんにちは京極先生』
『総帥に会いにいらっしゃったのですか、■■さん』
『はい。総帥と、Aに会いに参りました』

あの少年は誰だっただろう。なぜ少年は会いに来たのだろう。

ハッとして我に返れば、今どの譜面を弾いているのかがわからなくなった。今の時点で、繰り返しは何回目だろう。確かにCodaは過ぎた、だがTo codaまで戻るのを忘れていたらしい。私は目をパチパチと瞬きさせ、一度冷静になってからまた弓を握り直した。

「…」
「A」
「…！」

右には鬼道が立っていた。彼は数枚のプリントを片手に持ち、私に渡そうとしている。後ろに回せということか。彼から手渡されたプリントを受け取り、後ろの人に渡した。プリントを確認すると、応用の譜面らしい。私は受け取ったプリントを無言で暫く眺めていた。