348. 保健室での談話 ページ10
絶不調。それが狩屋が私に告げた客観的な印象だった。
「キャプテンが倒れたのは確かにショックだけどさぁ...、...」
「ごめん」
「謝らなくていいって。...俺も気持ち、分かるし」
友達から聞いた。最下位が確定しても狩屋は全力で走ってくれたと。本当に申し訳なく思う。情けない自分を戒めたい気持ちを消化するように、白く薄い掛け布団をぎゅっと握り締める。汗がじとりと白い体操服に染み渡る。溜め息が自然と出てきて、自分への呆れが止まらない。
「狩屋って優しいんだね」
「な、なんだよ急に」
「ここまで来るのに肩を貸してくれたりさ、気遣ってくれたりしたじゃん。すごく嬉しかった」
「...別に。普通じゃねーの」
「はは」
擦りむいた足を手当てしてくれたのも狩屋だ。生憎なことに保健室の先生はいなかったため、彼がしてくれることになった。彼は家庭の事情で最近年下の傷の手当てをよくするのだという。手慣れた様子でテキパキと手当ては進んだ。
「でもまあ見事な転け方だったよね。しかもテイクオーバーゾーンの中で」
「ほんと恥ずかしいよ」
「剣城くん、ずっと見てたし」
「ええっ。それ本当？」
「嘘言って何になるんだよ」
次に会った時にどういう目で見られるか。失笑された方がまだマシだが、剣城の性格からして単純に呆れられるだけだろう。今後もいつも通りに接してほしいと願うのみだ。
狩屋と話していると、暗澹とした気持ちが和らいでいく。敢えて笑い話として捉えてくれるのが非常に助かる。彼の根の優しさが垣間見えるのが安心感を促した。
「じゃ、俺次の授業に行くから」
「うん」
「あ、そうそう。天馬くん、すっげー心配してたんだよな〜。気遣われないくらいしっかり寝て体調回復しときなよ」
「わかった」
狩屋はそう言って手をひらひらとさせて水色のカーテンの向こう側に消えた。私は風にゆらゆらと吹かれる右側のカーテンを眺めながら、静かに目を閉じた。
そういえばこのベッドは序盤で神童さんが使っていたものだったな。彼はこの景色を見て、何を感じたのだろうか。何を思ったのだろうか。もしかしたら何も思っていないかもしれない。あの時は彼はキャプテンの責任に追われていたのだから。
物音一つしない保健室。ごろんと寝転び、ぎしりと軋む音がした。枕に頭を乗せて、優しく柔らかな世界にすうっと入っていく。今日は放課後の練習に参加できるだろうか。起きてから考えよう。そのように自己判断を後回しにした。
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充滞(プロフ) - 倉木 勝さん» わー！！とても嬉しいです。思わず悶えてしまいました。最初は自己満足のためにこの小説を書き始めたのですが、予想以上に他の方にも楽しんでもらえているようで何よりです。また、イナGOが多くの人に愛されているのは最高に嬉しいです。更新楽しく頑張ります。 (2020年8月22日 22時) (
レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
倉木 勝(プロフ) - 本当に大好きな作品です。通知が届く度に嬉しくて幸せな気持ちになれます。更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年8月22日 22時) (レス) id: 5a008c300c (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。今後も楽しんで頂けるように作品作りを続けたいです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - いつも楽しくみてます。更新頑張ってください (2020年8月22日 0時) (レス) id: 0996b5f75f (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます。イナクロ再履修が終わり、イナクロまでの構成が決まったらまた更新再開しようと思います。 (2020年8月7日 21時) (レス) id: ff878d9789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年8月3日 10時
