370. 心に区切りをつける ページ32
半分開いた剣城の鞄のチャックを閉めながら走り、先で走る天馬が入った稲妻総合病院に足を踏み入れた。昨日に引き続き今日も訪れることになるとは思わなかったなと思いながら自動ドアを通過する。できるだけ患者や医療従事者と衝突しないように気をつけながらも早足で歩き、優一さんの病室ではなくリハビリルームへ向かう。途中で天馬を見失ったが、場所は覚えているので問題ない。そして、目的地に到着すると、既に剣城は兄の元に辿り着いていた。
詳しい会話内容は聞こえてこなかったが、雰囲気から察するに悪い連絡ではなかったようだ。そして、手前の天馬が振り向いて私に告げた。
「手術できるようになったんだって」
やはり、と思った。剣城の今までが報われて良かったと思うよりも先に、まずは想定内のことが起こったことに対して安堵した。私はほっと一息をついて、剣城の鞄を無意識に抱きしめる。様々な思いが交差する状況の中、夜に近い夕方の病院の廊下は静けさを保っていた。
こちらの存在に気付いた優一さんが手を振り、弟の頭を撫でながら柔和に微笑む。剣城はその場に屈んだまま動くことはなく、しばらく放心状態のようであった。しかし、その背に寂しさは感じられない。私は優一さんに向かって会釈をした。
.
「キャプテン。入ってもいいですか」
「ああ」
コンコンと扉を叩いた後に、天馬と共に神童さんの病室に入室する。剣城兄弟と担当の理学療法士が手術の説明や出資者についての重要な話をしている間、神童さんの見舞いに行こうと言ったのは天馬だった。扉を開けると、若干苦い顔をしている神童さんがいた。
「天馬。キャプテンはお前だぞ」
「あっ…そうでした」
「今日はAも来てくれたのか。それで、サッカー部の調子はどうだ」
「それが、…聞いてください！昨日までは上手く回らなかったのが、今日はみんな活き活きとしていたんです！！」
「そうか」
神童さんは安心したように口元を緩めた。そして、今度は私の方に顔を向ける。
「天馬キャプテンはしっかりとしているか」
「えっ、…あ。はい。頼もしいです」
「頼もしい…か」
頼もしいとは言ったが、今日はずっと特訓場にいて練習に参加していないので、キャプテンとしての様子は見れていない。神童さんは特訓の存在を知っているためそのことを正直に話しても良かったが、必要以上に告げる必要もないと判断したため、少し誤魔化して返答した。また、剣城兄の手術の件も話した。
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充滞(プロフ) - 倉木 勝さん» わー！！とても嬉しいです。思わず悶えてしまいました。最初は自己満足のためにこの小説を書き始めたのですが、予想以上に他の方にも楽しんでもらえているようで何よりです。また、イナGOが多くの人に愛されているのは最高に嬉しいです。更新楽しく頑張ります。 (2020年8月22日 22時) (
レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
倉木 勝(プロフ) - 本当に大好きな作品です。通知が届く度に嬉しくて幸せな気持ちになれます。更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年8月22日 22時) (レス) id: 5a008c300c (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。今後も楽しんで頂けるように作品作りを続けたいです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - いつも楽しくみてます。更新頑張ってください (2020年8月22日 0時) (レス) id: 0996b5f75f (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます。イナクロ再履修が終わり、イナクロまでの構成が決まったらまた更新再開しようと思います。 (2020年8月7日 21時) (レス) id: ff878d9789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年8月3日 10時
