361. 夕方とノスタルジア ページ23
帰り道での天馬は元気がなかった。的外れな指示を連発し、それに対して周りが的確な指摘をする状況が続いたのだから落ち込むのも当然だろう。俯いて歩く天馬は鞄の肩紐を握りしめながら、とぼとぼ歩いている。私と剣城はその後ろを歩きながら、前方で天馬に何かを仕掛けようとする葵ちゃんと信助の姿を眺めていた。二人は両手で人差し指を出して戯れるように天馬にちょっかいを出す。天馬はビクッとして驚き、すぐに振り向いた。内股になっているのが何とも可愛らしい。
「元気出せっ」
「わっ、わ。きゅ、急になんだよ〜！」
「おりゃ」
「ていっ」
「もう、やめてよ〜！！」
「あははっ！！」
そんな微笑ましい光景を見ながら、私と剣城は並んでその後ろを歩く。本来ならば剣城は普段この橋を渡らないが、現在木枯らし荘で合宿中のため共に帰っていた。彼の上着が涼やかな風に靡くのを感じながら、隣で歩みを進めていた。
「……」
「……」
鴉が上空を飛び、鳴き声が遠くで聞こえる。その光景は至って日常的であり、心が安らぐ場面であった。私はこの平和な世界にずっと融け込みたいと切に願いながら、特徴的な茶色髪が揺れているのを微笑ましく見ていた。
.
夕暮れに包まれると、何だか寂しい気持ちになる。朝が始まりで昼が活動期で夜が終わりなのであれば、夕方は何なのだろうか。私はこの夕暮れが好きなのだろうか、嫌いなのだろうか。いや、好きなのかもしれない。最も夕方が好きで、居心地がいいと感じているのかもしれない。
夕暮れは儚く、空はグラデーションのように映しだして徐々に移り変わっていく。儚いものは美しい。芸術的な世界に誘い、懐古性を強く体現している。それが夕方だ。きっとそうなのだ。
夕方7時。それが私の好きな時刻だ。
河川敷の時計台がもうすぐその時刻を示そうとしていた。
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充滞(プロフ) - 倉木 勝さん» わー！！とても嬉しいです。思わず悶えてしまいました。最初は自己満足のためにこの小説を書き始めたのですが、予想以上に他の方にも楽しんでもらえているようで何よりです。また、イナGOが多くの人に愛されているのは最高に嬉しいです。更新楽しく頑張ります。 (2020年8月22日 22時) (
レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
倉木 勝(プロフ) - 本当に大好きな作品です。通知が届く度に嬉しくて幸せな気持ちになれます。更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年8月22日 22時) (レス) id: 5a008c300c (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。今後も楽しんで頂けるように作品作りを続けたいです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - いつも楽しくみてます。更新頑張ってください (2020年8月22日 0時) (レス) id: 0996b5f75f (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます。イナクロ再履修が終わり、イナクロまでの構成が決まったらまた更新再開しようと思います。 (2020年8月7日 21時) (レス) id: ff878d9789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年8月3日 10時
