351. 神童さんの病室 ページ13
太陽は238号室(現時点では退院済みだが)、優一さんは315号室、神童さんは410号室。頭の中で復唱しつつ、私は4階に向かっていた。何故かこの病室番号は鮮明に覚えている。何故覚えているのかはわからないが、記憶に残っていた。
階段が多い。だが、エレベーターをじっと待つ気にもなれない。私は人とぶつからない程度の速さで上っていった。階段をこんなに速く上れる体力がついたのだなと自分で感心さえする。
あった。あったぞ。「神童拓人」の文字が。ゲームでは彼の病室は3階に位置していたので、もしかしたら下の階かと思ったがどうやらこの階で合っていたようだ。
「...。」
ごくりと唾を呑む。なんだか緊張してきた。彼は眠っているだろうか。軽くノックしてから病室を覗いて、起きていないようであれば潔く去ろう。うん、そうしよう。
私はノックを3回してから数秒置き、そっと扉を横にスライドさせた。
彼は起きていた。私の姿を認めるなり、驚いた表情を浮かべる。彼はベッドの上で座って本を読み、補助机の上に携帯を置いていた。彼は静かに微笑む。
「あ、えっと...Aです。入ってもいいですか」
「勿論。いいよ」
ドクンドクンと波打つ心臓を感じながら、私は彼の元に向かった。神童さんの腕には点滴の針が刺さっている。右足は包帯が厚く巻かれて固定されていた。思わず注視していたので、彼の視線がこちらに向いているのに気付くのが遅れた。棒立ちになっていると、着席を促されたので近くの椅子に座らせてもらうことにした。
「浮かない顔だな」
彼は一言そう言った。私はどう受け止めればいいのか分からず、取り敢えず頷く。そして、顔を上げて尋ねた。
「あの時、痛かったですか」
「あの時っていうのは、倒れた時のことか？」
「はい」
「そうだな...。あまり記憶がないんだ。痛かったというよりは、気持ち悪かったと表現した方がいいかもしれない」
「そうな、んですか」
「どうした。そんなことを聞くなんて」
彼は依然として優しい声色だった。慮るように、気持ちを尊重するように問いかけられる。私はそれとなく返答を誤魔化した。罪悪感しか感じなかった。
話を逸らすように、天馬がキャプテンに指名されたことを告げた。話は広がっていき、ファイアトルネードDDの進捗状況、部の調子などを話した。自分が今日リレー中に倒れたことは話さなかった。
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充滞(プロフ) - 倉木 勝さん» わー！！とても嬉しいです。思わず悶えてしまいました。最初は自己満足のためにこの小説を書き始めたのですが、予想以上に他の方にも楽しんでもらえているようで何よりです。また、イナGOが多くの人に愛されているのは最高に嬉しいです。更新楽しく頑張ります。 (2020年8月22日 22時) (
レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
倉木 勝(プロフ) - 本当に大好きな作品です。通知が届く度に嬉しくて幸せな気持ちになれます。更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年8月22日 22時) (レス) id: 5a008c300c (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。今後も楽しんで頂けるように作品作りを続けたいです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 9a1665b462 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - いつも楽しくみてます。更新頑張ってください (2020年8月22日 0時) (レス) id: 0996b5f75f (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます。イナクロ再履修が終わり、イナクロまでの構成が決まったらまた更新再開しようと思います。 (2020年8月7日 21時) (レス) id: ff878d9789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年8月3日 10時
