第三話 ページ3
一郎太はきまりの悪い顔をしながら通り過ぎようとしたが、咄嗟に彼の名を呼んで引き留めると顔をこちらに向けた。無気力に垂れ下がった彼の指がぴくりと動く。顔に影が落ちて表情が読み取れない。
「…A」
「どうして避けるの」
「それは言えない」
「言ってくれないとわからないよ。私のこと嫌いになったの？」
そう問いかけると、彼は堰を切ったように全力で否定した。
「違う！違う、けど…」
「…」
「＿悪い、本当に言えないんだ」
一郎太のもとへ近づき、彼のシャツの胸元を掴みながらじっと目を見つめた。すると、いきなり廊下の壁に肩を押しつけられた。視界が歪み、一瞬何が起こったのか分からずにいたが、ちょうど視界に一郎太の表情が見えた。久々に真正面から見たその表情はとても苦しそうで、なにかを抑えているようにも見えた。どこか息が荒く、情に駆られたような顔をしている。
「＿いち、ろた？」
まるで息を止めにかかるように唇を奪われた。瞬く間にそれは起こった。唇を押しつけられ、食べられてしまうのではないかという程に勢いのある口づけだった。普段の一郎太らしくない積極的なその動きに私は唖然としていた。顔の向きを変えて何度も唇を重ねられ、私はもうどうしていいかわからなくなっていた。
一郎太とキスをしたのは通算二度目だ。小学生の頃ふざけてキスをした覚えがある。でも、その頃と今のキスは全く性質が違う。昔は単純なキスだったけど、今はどちらかというと大人びたキスだ。愛しているように食むような軽快なキス。しかしある時その勢いが止まった。一郎太は我に返って放心していた。虚な目をしている。顔はみるみる青ざめ、後ずさった。
「ごめん」
そう言って立ち去ろうとした一郎太の腕を掴んで止めた。
「一体どうしたの。一郎太らしくないよ」
「わからない。俺にもわからないんだ。ごめん」
「一旦落ち着こう。ちゃんと話し合おう」
「…ああ」
場所を移し、私の家の自室で彼の話を聞くことにした。
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よーさく - は？てーてぇーんだが？？ (2023年3月7日 18時) (
レス) @page4 id: c88dc708d6 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 花鈴萌さん» わわ！ありがとうございます！とても嬉しいです(泣)明日更新します！ (2023年2月21日 21時) (レス) @page2 id: a229a1ca73 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - こんにちは、コメント失礼します。めちゃくちゃ面白いです、もう最高です大好きです……！これからも応援しています。 (2023年2月21日 18時) (レス) id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2023年2月16日 16時
