75. 含みのある目 ページ39
「神童さん」
「あっ、...いや、その...大丈夫かなって」
丸めたティッシュを投げ捨てるという変なところを見られてしまったと恥ずかしく思っていると、彼は距離感を量るように様子を窺う素振りをしたのが見えた。彼は部室に用事でもあったのだろうか。
「色々あって疲れただろう」
「それは神童さんも同じですし、私なんてそんな」
「Aが一番頑張ったよ。試合の時だってそうだ」
彼は私に小さく微笑む。励ますような笑みだった。私は感謝の言葉を告げることしかできなかった。先輩に気を遣ってもらってばかりだ。
「...！そういえば、神童さん、記憶」
「？ 記憶って？」
私は確認するように尋ねる。
「私って、雷門サッカー部の一員ですよね」
「ああ。なに当たり前のことを言っているんだ」
「優一さんが消えるまでは、神童さんにとって私はただの部外者だった筈です」
そう言うと、神童さんはしばらく私の言っていることが呑み込めないような顔をした。しかし、途中で納得したように「あぁ」と声を出した。
「たしかに」
「京介のことも覚えてるんですか」
「ああ。そうだな」
記憶が本来の世界線と統合しているのか。私は彼の記憶状態やタイムトリップによって生まれる存在の矛盾について思考を巡らしていた。
「...そういえば、この世界の俺はどこにいるんだろう」
「そうですよね！そう、それを考えていたんです」
「わからないな。後でフェイに聞いてみよう」
彼はそう言いながら近くの椅子に座った。私は揺れる彼の灰色の髪をじっと見ていた。綺麗な髪だ、とぼんやりと思っていた。すると、髪の隙間から彼の目がこちらに向いているのがわかった。私は意表を衝かれた気がしてドキリとした。
「...なにか用事があってここに来たんですか？」
「.......ああ。少し気になって」
「何がですか？」
「君が」
彼はただそれだけを言った。私の名が出てくるとは思わなかったので驚いた。彼はただ静かにこちらを向いている。
この神童さんは私の知っている神童さんだ。
優一さんが歩ける世界線のように、私を「知らない人」のように見ていない。彼の目には警戒心がない。それが少し安心した。
「やだなあ。私、そんなに疲れてるように見えますか？」
「泣いていただろう。さっき」
「それは、まあ、はい」
「だから、心配になって来たんだ」
彼の目は私を捉えていた。
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
