74. 憂鬱に包まれる ページ38
「Aちゃん、大丈夫？」
「うん、ありがと」
駆け寄ってくれた輝の肩に手を置いて、私は涙を拭いながらなんとか笑顔を浮かべた。そして軽く深呼吸する。また、もう一度京介を見上げた。じっとこちらを見る彼と目が合う。私はすぐに視線を落とした。
サッカーをする剣城京介はちゃんとここに存在している。歴史は修正されたのだ。
しかし、原作通りではない。彼のトラウマはより重いものになってしまったかもしれない。自分を庇って兄が下半身付随になるのと、兄が靱帯を切られるのはどちらが辛いだろう。それに、後者はもしかしたら彼は目の前でその光景を目撃していたかもしれない。
私は確認したかった。彼はその凄惨な光景を見たのだろうか。そして、彼がサッカーを続けた理由を。
鼻を何度啜っても鼻水が止めどなく出てくるので、私は輝にティッシュを貰えないかを聞いた。しかし、彼は申し訳なさそうに「ごめん、今は持ってないんだ」と答える。
「部室にあるから取ってきたらいいんじゃないかな」
「わかった...」
とぼとぼと歩く。気分が沈んでしょうがない。
柱に手を置きながら短い階段を上り、一軍部室に向かっていると途中で別の柱に肩が当たった。私は無言でその痛みを受けながら歩いた。
「...。」
部室の扉が閉まる。視界にはついさっき見た光景が広がっていた。
優一さんが消えた場所だ。正確に言えば、タイムジャンプする前に彼が消えた場所と同じだ。彼は過去の部室で消滅した。
テーブルにはポテトチップスの袋はないし、紙ナプキンもない。ロッカーは全部閉められているし、飲みかけのペットボトルもない。靴下も転がっていない。
特定の椅子に座る。タイムジャンプ前、優一さんが消える前に座っていた席だ。
私はティッシュを一枚取り、一気に鼻をかんだ。力みすぎたのか、出した鼻水には僅かに血が混じっていた。それを丸めてゴミ箱に投げ捨てた。綺麗に放物線を描いて入ったと喜んでいると、何か視線を感じて私はその方向に目を向けた。
そこには壁に手をつきながら棒立ちしている神童さんがいた。
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
