73. 可能性に賭けた再会 ページ37
どんよりとした空気感の中で私たちは現代にタイムジャンプした。今までいた場所はアルファ達によって2010年に転送されたようだが、その一年後であり私たちが夏休みを終えた最初の登校日にタイムジャンプした。
きっとこれから京介に会う。もし、彼が幼少期に兄の靱帯が切られる凄惨な現場に立ち会っていたとしたら、心にどれほどの傷を抱えているのだろうか。想像できない。
彼に会う勇気がなかった。そもそもいるのだろうか。彼はこのサッカー棟に。
サッカーをしていないかもしれない。事件は直接的には関係していないが、サッカーを嫌いになったかもしれない。
「…俺、信じるよ。剣城はいるって」
「うん。きっと剣城はいるよ！」
天馬と信助はそう言う。神童さんも続けて言った。
「あいつならきっとサッカーをしている筈さ」
その時私は自分の感情に整理をつけることで精一杯で、信助や神童さんが何故本来の記憶を取り戻しているのか疑問をもつことはしなかった。些細な違和感は自然なものとして勝手に変換されていた。「剣城」を剣城優一ではなく、剣城京介と認識している彼らはまるで当然のように思えてきていた。これが歴史の修正力によるものなのだと気付いたのは以降の落ち着いた頃だった。
＿＿＿＿＿＿＿
すうっと息を吸って、自動ドアの前に立つ。サロンが見えた。しかし、そこには京介の姿はなかった。
いない。いや、まだ可能性はある。原作でも最初はこうだった。
私は彼の姿を探した。しかし、斜め後ろから現れた。
「あっ！剣城！」
信助の声で私たちが振り向く。彼は階段を降りていた。そして信助の言葉に呼応するように話した。
「なんだ。来てたのか」
私は彼を正面から見て、なんともいえない気持ちになった。泣き出してしまった。
さっき泣いたばかりなのに。様々な思いが溢れるように出てきて、とめどなく涙として吐き出されていく。
「おい、どうしたんだ」
「べ、別に何でもないから」
「…？」
彼なら今頃、私に対して怪訝な顔をしていると勝手に想像しながら彼を見上げた。しかし、実際には彼はぎょっとした顔をしつつ、心配してくれていた。本気で心配しているような表情だ。
それもそうだろう。夏休みが終わり、登校初日の部活で久々に再会した仲間に急に自分を見るなり泣き出されたのだから。私が彼の立場なら困惑するに決まっている。
「だいじょ、ぶ」
涙を堪えた。しかし、溢れ続けた。
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
