70. 予感 ページ34
どう声をかけても、偽善的で同情的になってしまいそうだった。だから、言葉が簡単に口から出てこなかった。だけど、自分の気持ちを正直に伝えたいと思った。
「私は、優一さんの選んだ道であれば正しいと信じています」
「…」
「本音を言うと、行動に移す前に相談してほしかった」
思考がぐちゃぐちゃになる。私はそのまま続けた。
「でも、きっと相談すれば結局何もできずに終わっていたかもしれない」
そう言い終わった時、私はある予感がした。なにか、変だ。彼から生命力を感じない。いや、逆だ。感じている。わからない。生命力が抜けていっている。彼の生命力が粒になったように放出されているような感覚。彼の周囲には生命力が纏っているが、彼自身からは生命力を感じない。
しかし、見た目に変化はなかった。
「そうだね。ごめん」
「謝らないでください。歴史はちゃんと元に戻ったんですから」
そう言って、ふと思った。優一さんの歴史改変によって優一さんが靱帯損傷で歩けなくなり、京介がサッカーをし続ける世界線に分岐したとすれば、現時点の優一さんの存在が矛盾することになる。原作で彼が消滅したように、これから彼は消滅するのだろうか。
「…！私、みんなを呼んできます」
「行くの？」
「だって、優一さんが消えてしま」
「そう」
彼は寂しそうに、名残惜しそうに呟いた。しかし、私を止めようとはしなかった。
彼は自分自身の運命を理解している様子だった。
私は自動ドアの前に駆け寄り、そしてサロンに飛び出した。自動ドアが背後で閉まろうとして、グラウンド方面に身体を前傾させた時、向こう側から声が聞こえてきた。
「…Aちゃん、ありがとう」
「えっ」
瞬間、扉は閉まった。戻ろうかとも思ったが、今は彼が消えるかもしれない一刻を争う状況だ。早く皆に伝えなくては。
跳ぶように階段を降り、全力で走る。息が荒くなる。腕を大きく振る。その先の上りの階段に足を引っ掛けそうになったが、なんとか体勢を持ち直す。グラウンドに続く自動ドアが開く。
自動ドアの先には天馬たちがいた。私は声を最大限絞り出すように、腹に痛いほど力を入れて、掠れた声で叫んだ。早く。早く伝われ。
「みんな！！！！優一さんが！！！」
喉の奥がひりひりとしていた。
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
