65. 心当たり ページ28
「心当たりがあるの？」
側にいる天馬がそう言う。神童さんはただこちらを見ている。信助は興味津々でこちらに視線を向けている。ワンダバは作業の手を止め、こちらをちらりと振り返る。フェイの視線が突き刺さる。
言っていいのか。ゴーストミキシマックスのことを。
「…それは、言えないこと？」
「違う」
そう誤魔化しつつ、私は必死に思考回路を働かせた。あぁ、疲労で脳がロクに動かない。冷戦な判断ができない。連日の睡眠不足と試合でただでさえ疲れているのに。
ゴーストミキシマックス。あれは、いつ初登場だっただろうか。今の時点で私が知っていておかしくない情報だろうか。確か、戦国時代だっただろうか。それとも、もっと後だろうか。
「…」
「A。思い当たることは何でも言ってほしいんだ。じゃないと、俺たち前に進めないよ」
天馬の声がダイレクトに脳に響く。私は明言を避けて話すことにした。
「...もしかしたら、その女の子はオーラを他の選手に与えたんじゃないかなと思って」
「オーラ？」
私は息が詰まるような思いだった。現時点で知り得ない情報を皆に伝えて、疑念を連鎖させてしまうことが何より一番怖かった。私の中で、トリップしてこの世界に来たことを話す選択肢など微塵もなかったのが、その恐怖を助長させた。
「…うん」
それ以上を言おうか言わないか悩んでいた時、天馬は思い出したように言った。
「あ！太陽がやってたやつだ！」
「え？」
「新雲戦の後半でやってたでしょ」
私は唖然とした。それは化身ドローイングではないのか。少し方向性が違うが、勘違いされても構わない。とにかく、今はなんとかこの場は乗り切れそうだ。
「そうだった？」
信助が不思議そうにそう呟く。フェイは話に割り込み、信助や神童さんは別の世界線で準決勝を迎えていたため記憶に差があると話した。正直、私も全く覚えていない。天馬の言う終盤での太陽はよく覚えていない。天馬に視線がもっていかれていたからだ。天馬の成長ぶりに夢中になっていた。
「化身ドローイングか。だけど、彼女は化身を発動していなかったよ」
「それもそうだね」
「だけど、女の子がアルファ以上のパワーを与えるなんてことあるのかな...？」
「この時代はまだしも、僕たちの時代では優秀な女子選手は多くいるんだ。可能性は大いにあるよ」
そう会話していた時だった。突如、ワンダバが異変を告げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
