68. 真実 ページ32
彼は私と一対一で話すことを条件に、経緯を話すことを承諾した。私と優一さんは二人のみでサッカー棟のサロンを歩き、一軍の部室に入室した。部室にある時計は夜9時を指していた。当然部屋には誰もいない。鍵は閉まっていた筈だが、彼はタイムブレスレットを操作して開けたようだ。
タイムトラベルを繰り返していると、たまに時間の感覚がわからなくなる時がある。数分前までは朝だったのに、今は夜なんてことが簡単に起こってしまう。
入って右横にある円状の机に設けられている青い椅子に彼は座った。私は入り口側の手前の椅子に座る。彼の隣の椅子だ。
優一さんの衣服に付着した血は既に乾いている。私服のズボンはブライトピンクに覆いかぶさるように濁った赤があった。
一軍部室は散らかっていた。ロッカーは二つほど開かれたままで、飲みかけのペットボトルが放置されている。円状の机には紙ナプキンと共にポテトチップスの空袋が置かれたままで、ロッカー前の長椅子前には片方だけの靴下が落ちていた。しかし、それを気にしている場合ではなかった。
物音一つしない部室。私と、優一さんだけがこの空間にいる。
戦慄に似た緊張感が漂っていた。
「…はあ」
彼は小さく溜め息をついた。それは気持ちを落ち着けるようなものに聞こえた。
「手短に話すよ。試合後、俺はこのタイムブレスレットの力で6年前に戻った」
彼は続けた。私は話を真剣に聞いていた。
「でも、もう歴史は戻せない。俺は助かってしまった」
時計の針だけがカチカチと響く。
「だから、別の方法で過去の俺からサッカーを奪った」
私はごくりと唾を呑んだ。共に空気を呑んだ。
「それは…」
「うん。昔の俺の靱帯を切って、サッカーができない身体にしたんだ」
彼は平然と言った。いや、言ったように見えた。しかし、無表情に涙の跡があると、アンバランスさが際立つ。
何故。何故その道を選択したんだ。
何故、彼は自分を傷つけたんだ。
何故、何故、優一さんはそこまで自分を犠牲にできるんだ。
怒涛のように気持ちが心の中で溢れてくる。
しかし、その気持ちをぐっと堪えて、彼に向き合った。
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ルナストーン(プロフ) - …っ！？（何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ！？） (2020年10月12日 0時) (
レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー！ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» （［甘い戯れ］の後のやつの最後に向けてなのです）こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：充滞 | 作成日時：2020年10月10日 21時
