初心です。 ページ6
第2セットが始まり、及川くんが相手チームの疲れを後押ししてしまうようなサーブを打った。
めちゃくちゃ速い。そしてコントロールがえぐい。
腕もげそう。いやもげる、確実に。
どんどんどんどん、青城側が点を重ねていく。
バレーって「点を取る間のスパン」が、他の競技よりわりかし短いんだと思う。
しかも、サッカーやバスケットボールなんかでは、攻守の入れ替わりが目まぐるしく動くのに対して、バレーは「ボールを持っている方が攻撃のチャンス大」っていうルールがある。
他の競技と比べるのも、おかしな話だとは思うけど。
でも、スパンが短くて、攻撃がクッキリ見えやすい(見えないこともあるけど)バレーだから、他にはない「スピード」が出せる。
めっちゃかっこいい。
･･････魅力に気づいてしまった。
などと思いながら試合を見ていると、監督さんが
取るに足らない相手だということかもしれない。
でも、私が観ていた限りでは。
みんな、めちゃんこ本気の顔だった。
中でも及川くんは、司令塔の表情でトスをあげてて。
すごくかっこよかった。
なんなんだ、この男。
普段とのギャップエグすぎマンか？
かっこよさすぎる。私の語彙は機能していない！ かっこいいしか言えない！
私の語彙力が問題なだけかもしれないけど。いや多分そうだな。
悶々と考え(そして悶え)ている私を、絢ちゃんがジト目で見てる。
「あぅぁ〜及川さま交代しちゃうっっ」
コートを凝視すれば、2年と交代していた。
「もっと観たかったなぁ」
かっこよかったもの。すごく。
(伝えてみたら、どうなるかな？)
無理か、と息を吐く。
2年の子も相当な実力で、相手に点を与えず得点を重ねていく。
セットカウント。残月高対青葉城西高、2−0で青葉城西の勝利だ。
「絢ちゃん、及川くんのとこ行きましょ」
「んーいよー」
「わっ！！ Aちゃんじゃん！！」
顔を覗き込まれた。恥ずかし。
「どう、俺、かっこよかった？」
フンス！
勢いよく首を縦に振った。
「そう？」
「満更でもない顔すんな、気持ち悪い」
岩泉くんがゲンコツを落とした。
「い、」
言わなきゃ。
「今まで、でっ、一番かっかっこよかったです･･････」
「･･････！」
私たち、意外と、初心だな。
「何中学生カップルみたいなことしてんだか」
「確かに」
「なー」
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作者名：めい | 作成日時：2024年1月23日 19時
