ファンさんです。 ページ5
「あっ、A！」
遅っ！！ などと言いながら、ギャラリー席から絢ちゃんが来てくれた。
そのときだ。
バシン、と強すぎる音がして、ボールがこちらに飛んでくる。
「･･････ひ」
勢いに目を瞑る。
(やばい、これ顔面壊れるの必須か)
なんだこの流れ。おかしいではないか。
けど、予想していた衝撃は来なかった。
「なーにやっとんねん残月高のスパイカー！！」
「え、絢ちゃん」
そうでした。
絢ちゃん、スポーツ大得意な人だった。
部活には入らず、いろんな部活に助っ人参加してるらしい。
目を細めて、ほぼ無表情で大声を出してる。迫力満点だ。
「ヒィッ！ サーセン！！」
「ちょ、びびらせてますって」
絢ちゃん怖いから。やめよう。
ギャラリー席に向かい、絢ちゃんが確保しといてくれたとこで練習試合を見る。
靴の擦れる音、人工革と手が立てるとは思わないような衝撃音、全て私には新しい。
何せ私、運動神経悪いもん。
中学んときにバレーしたけど、対人パスなんかは、パスと呼べる代物ではなかったはずだ。
スポーツは敬遠してたから、実際に見ることなんてなかったわけで。
ホイッスルの音が鳴り響き、休憩に入った。
練習試合だからか、休憩はわりかし長めらしい。同級生同士が騒いでいる。
「及川んとこ行くー？」
「邪魔なだけじゃ･･････？」
首を傾げると、周りの女の子の視線が怖い。
「あなた、及川さまのこと、いつも見てないの？ 彼女失格ね」
「え、っと、･･････永川さん、なぜにそれを･･････」
髪の毛を編み込みにした、綺麗で高飛車な態度の永川さん。彼女がいること、なぜに知っているんだ？
「だって、及川さまがいつも話してるもの。ファン会員全員、彼女がいるって頭に叩き込んでるわ」
「えっ」
まじか。その高飛車な態度、言ってることにそぐわないはずだ。だって言いたいこと「彼女ならしゃんとしろよ」ってことでしょ？ ていうか及川くん。そんなこと言ってるんだ。
「ありがとうね、永川さん」
「はぁ？」
怪訝そうに眉を顰める彼女に、私は笑う。
「及川くんに、試合が終わったら声かけに行きますね。流石に試合中は気を散らしかねないですもん」
「出たお人好し」
絢ちゃんが、変な顔で言う。
「まあ、好きなようにしたら？ あたしはなんでもいいから」
ただのいい人やん。
「来てくんないし。ちぇ」
「ウルセェクソ川」
「ひどい！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めい | 作成日時：2024年1月23日 19時
