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甘やかし上手です。 ページ4

授業が終わってすぐ、及川くんと岩泉くんは走って体育館へ。
「私たちも行きましょっか」
「おっけ」
 絢ちゃんとそんな会話をしていると、「助けてAちゃん!」と高い声がした。某薬屋アニメの食いしん坊な可愛い系女子の声みたいな。
「あれ、奈々ちゃん」
 クラスの人気者、奈々ちゃん。及川くんともフランクに喋れる、可愛くて明るい子だ。私に話しかけてくれるだけでめっちゃ嬉しい。
 ふわふわした髪の毛を指で弄りながら、こちらへ向かってくる。
「やばい! 部活あるのに日誌書くの忘れてた! うぁーどうしようっっ」
 そして、見た目とは反して剣道部のエース。めちゃくちゃ憧れる。私あんまスポーツ得意じゃないもん。
「私、代わりましょっか? 奈々ちゃん忙しいでしょ、せめてこれはサボってください」
「『サボってください』って・・・・・・」
 絢ちゃんは呆れた目で私を見て、「先行っとこか?」と声をかけてくれた。
 うん、と頷き、私は奈々ちゃんに微笑みかける。
「ストレス解消してくださいね」
「うん、ありがとう。ほんと、Aちゃんって甘やかし上手だよね・・・・・・!」
 見習わないとなぁ、とにこにこ言われると、私も胸がほっこりあったかくなる。
「行ってらっしゃい」
「うん」
 奈々ちゃんは意気揚々と教室を出て行った。絢ちゃんも、「合流すんぞ、後で」と釘を刺して体育館へ向かってった。
 私も早く行かないと、及川くんを観られないや。
 なんというか、彼の表情を集めたくなってしまうのだ。って、及川くん中毒か、私は。
「ええと、1限は化学、2限は、」
 字を書くのは嫌いじゃない。その人の性格が現われる気がするから。私は4年くらい習字をしてたから、なんというか人よりは良い、と思う。多分。
 全力をかけて書いていても、やはり面倒臭い。
 終わった時には10分弱たっていた。
「やば、行かないと」
 これは及川くんだけじゃなく、絢ちゃんも怒りそうだ。彼女の関西弁での怒りが易々とイメージできる。本当に怖い。
 がたんと大きな音を立ててしまい、余計慌てそうになる。
 こんなので行って、いいことあるか?
(や、ないな)
 __せめて。周りに及川くんが馬鹿にされない程度の中身で行こう。見た目が地味な上に、性格も難ありじゃ及川くんが馬鹿にされるのだから。
「よし、行こう」
 カバンを持ち、体育館へ急ぐ。
 ひょこ、と中を覗き、その場の空気に息を呑む。
 今まで見た中で、一番真剣な顔の及川くんがいた。

ファンさんです。→←気づいてないです。



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作者名:めい | 作成日時:2024年1月23日 19時

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