気づいてないです。 ページ3
次の日の休み時間。
「Aちゃん、今日の放課後すぐ練習試合やるからね！ 絶対観に来てね」
「ヤンデレか」
「喋り方がな」
うんうん、と頷く絢ちゃんと岩泉くん。ひどいな。
「けど、花巻とか松川がナンパしそうじゃね？」
「あのピンクの人ら？」
「絢ちゃん、ピンク色の人は1人だけです」
付き合う前だけど、なんか及川くんと岩泉くんが廊下で暴れてたのを面白そうに見ていたのが彼らだったのだ。今もよくつるんでいるのを見かける。
「まあー、Aちゃんは俺のだし？ 心配はしてないけど？ 何かあったらいちゃつくだけだよ？」
「それめっちゃ心配してねえ？」
「してますよーだ」
なんと。こんな地味なやつがモテるわけないのに。それ言ったら及川くんが特殊趣味みたいになるんだけど。
「じゃあ、楽しみにしてますね。んふ」
思わずにまり笑ってしまう。やば、引かれたかな？ てかいつの間に、私は及川くんに引かれる心配をし始めてるんだろう。最初はお飾りって構えていたはずなのに、私は単純だ。
「かわいいやばい、岩ちゃん取らないでよ」
「取らねぇよ。お前取らせねーだろ、まず」
呆れたような顔の絢ちゃんをぼーっと見てたら、いつの間にかすぐ横に及川くんの顔。
ぎゅん、と心臓が早鐘を打つ。
ほおに、私のものじゃない、冷たくて少し固い彼のほおが擦り付けられた。
恥ずかしい。
「でもこの時間が、続いて欲しい」、そう思ってしまう私は罪だな。もっと、いろんな女の子がいるはずなのに。でも、なんか及川くんが他の女の子といたら、そう想像したらなんか、やだ。
今は、その気持ちに蓋をしておくことにする。
(だっていいことないし、バラしても)
楽しみだなあ。観に行くのは初めてだから。
「かわいいね」
「うひえっっ」
こんなこと言われて、嬉しくならない女子はいない。ただし絢ちゃんを除いて。
絢ちゃんはもともと、兵庫の中学校にいたらしい。
そこで、顔だけはいいけど性格まじ終わってる双子と知り合ったんだと。それでイケメンは気持ち悪いとしか思わないようになったそうだ。絢ちゃんは特殊体質なのか？
「気持ち悪ぃ」
「やばい。これは、半径1メートル以内に入ったら吐く」
「失礼が過ぎないかい君たち？」
私はもう顔から火が出るような恥ずかしさだ。
そこで、予鈴の音。
「じゃ、来てね、絶対」
「はい！」
岩泉くんに引っ張られても笑ってる及川くんを見て、絢ちゃんが一言。
「気色悪」
「結構ひどいですね」
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作者名：めい | 作成日時：2024年1月23日 19時
