失礼、その子俺の。【及川徹】 (ページ16)

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おつよいです。ページ16

……３人共おつよい。
　スパイクを決める岩泉くん。
　ツーアタックをかます及川くん。
　意外にレシーブでチームを救い続ける絢ちゃん。
　あー、いつメン入るとこミスったかな。なんて。
「ナイスキー、及川くん！」
「いぇーい」
　絶妙な角度から見えた彼の顔とピースに、おもわず笑みがこぼれた。
「えっ待って尊いんですけど〜！」
「及川せんぱーい！きゃぁ！」
　私の周りのファンも大歓声を浴びせる。
　そのとき、隣のコートから不穏な声がした。
「え……、って」
　絢ちゃん！？
　私は人混みを縫って駆け出した。
「あの、東雲絢の友達です。保健委員の手伝いもやってるので、私が保健室まで……」
「あら、Aさんじゃない！あなたなら大丈夫ね、早く行って！」
　あ、永川さんだ。及川ファンクラブ会長。
　私は絢ちゃんを覗き込む。
「絢ちゃん、聞こえますか、返事できますか！？」
「……ぅん」
「よし。今から少し離れたところで応急処置を行うのでおんぶしますね」
　そして私は彼女を抱き起こし、おんぶする。
　絢ちゃんの顔色は青白く、汗がたくさん出ていた。
　熱中症だ。
「岩泉くーーん！絢ちゃん体調不良でーーす！ということで勝ってくださーーーい！！」
　私は準決勝に変わった男子の試合を見て、叫ぶ。岩泉くんのサーブが放たれる笛が鳴る直前で、岩泉くんはぴくりとして、それから前を見た。

「絢ちゃん、返事できますか」
　良くなってきたようで、養護の先生に許可をもらって男子の試合を見に行く。
「少しでもしんどいと思ったら、絶対に声をかけてください」
「ういっす」
　頑張れ、とつぶやく彼女は、やっぱり恋する乙女です。
　なんと、6組はバレーで優勝を収めてしまった。
　松川くん？や花巻くん？が決勝にいたけど、阿吽コンビはやっぱりすごいんだなぁと思った。
　でも、それ以上に。
「岩泉やばいよなー！」
「いつも以上にすごかった！」
　……そう、今回の勝負の立役者は岩泉くん。
　そして多分。
「岩泉！」
「東雲！？」
　絢ちゃんはへにゃっと笑った。
　……この人たちがついにくっつくのかもしれません。
　知らないですけどね。