失礼、その子俺の。【及川徹】 (ページ14)

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バックハグです。ページ14

「あ、おはようございま」
「A。もう二度と休むな。及川がくそだりぃ」
　岩泉くん、再会の喜びとかないんですか。あんたいっつも及川くんのこと喋ってんね。
「すみません。ご迷惑を」
「いやまぁいいんだが」
　漢気あふれる口調。懐かしいわ。
「Aや。1日ぶりやんな、なんでこんなに久しぶりに感じるんやろ〜」
　私の頭をくしゃっと撫で、絢ちゃんが自分の席へ行く。
「ちょっと〜それ及川サンがやることなんですけどぉ〜」
「･･････！！」
　某コミュ症作品のヒロインみたいに震えかける。ファンクラブ会長はいい人だったけど、ぅーんヤラれそう。誰にとは･･････言わない。テカチュウすか。

　いかんせんバックハグである。

　なんちゅう公開処刑だ、クラス中が生暖かい微笑みに満ちてるもん。
　休まなけりゃよかったのか。いやそれはそれで、よろしゅうないかもな。
「あの、昨日はありがとうございました･･････！」
　お礼を言うと、及川くんはにっこり笑った。いつもの何倍かの笑み。ザ・満面の笑みです。
「いいよいいよ、めっちゃ可愛かったし」
「･･････？」
　え、私なんか言いましたっけ？と首を傾げた。
　及川くんは、ますます笑みを深くするばかり。
　なんっなんだっ一体。
　後ろにまだあったかい体温を感じたまま、おろおろした。
　･･････もう無理、バックハグされたまままともな思考ができない。
　というか、意識し始めたら他に逸せない。及川パワー。
　みるみるうちに顔が熱くなっていく。
　顔から湯気が出そうだ、本当にやめて欲しい。
「Aが倒れそうだぞ！」
「なんでAちゃんにそんなことするのよっ、及川！」
　クラス中から批難の声が多発。ありがたいけどね。
　みんなに注目されている恥ずかしさと、及川くんに抱きしめられている恥ずかしさの二重奏。
　なんてこったパンナコッタ。
「お、及川くん･･････」
「んー？」
「及川くんのドS･･････！！」
　今思いつくギリセーな悪口が、これしかなかった。
　それでも彼には、効いたみたいだ。
　“ゲーン！”と効果音がつきそうなほどに、ショックを受けている。
「ぶっっははははっっっ！！」
　絢ちゃんがゲラゲラと笑い出した。
　その流れでクラス中が笑いに包まれる。
　いや、あのさ。
　誰か気付こうよ。そして私を助けようよ。
　私まだ、解放されてないんだけど。