失礼、その子俺の。【及川徹】 (ページ1)

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始まりです。ページ1

「Aちゃん」
「あ、･･････及川、くん」
　私、AA、ただいま大ピンチでございます。
　学校からの帰り道、ぼうっと猪を思い浮かべて歩いていたら知らない人3人に囲まれた。
　人に「どいてください」なんて言えない質(たち)で。
　うぅ、こんなにも私の性格を憎んだことはないはずだ、多分。
　路地裏に入ってしまい、絶望する。
(終わってる、自業自得だ)
　そんなところに、及川くんが来た。
　1ヶ月前くらいに告白されて付き合って、けど多分お飾りで。もしくは遊びか。顔、赤くなかったし。及川くんも、休み時間はしゃべってくれるけど、部活が忙しいんだろう。予定が全く合わない。
　というか人気者の彼と私は天と地の差で、すぐ飽きられそうなものなのに、1ヶ月持ってるのが不思議だ。
　及川くんは、少しパニックになってる私にモデルのような笑いを見せた。
　そして、冒頭に戻る。

「失礼、その子俺の」

　イケボすぎる！！と内心で叫びつつ、こんな台詞を私が言われていいのかと思う。ファンの方が怖い。
　にっこりと口角を上げた及川くんは、私を見てほんの少し甘い笑みを浮かべた。
　やばいやばいやばい･･････！
　顔面偏差値高い！無駄に！バレーも上手いし何このパーフェクト超人。
　人前ではまあ丁寧に接す方かな、って自分でも思うし、丁寧語使ってるけど、心中爆発しそうで、バレていないか心配だ。
「この子が財布落としてたから拾っただけなんだよね。失礼すぎるわ」
「まじそれー」
　げらげらと下卑た笑いを浮かべるその人たちに身がすくむ。
　硬直した体、目の前には見るからに強そうな知らない人と、身長約185cmの及川くん。
　突然、おもむろに及川くんがこちらを向いた。
　耳元に口を寄せられて、甘い蕩けるような声で囁かれる。
「大丈夫、俺がついてる」
　そんなの言われたら、好きになってしまいそうだ。
　ただでさえ単純なのに、こんなことされたらイチコロです･･････！
　はわ、と慌てて頷く。
　多分、顔がすごい真っ赤になってるだろう。
　及川くんが後ろへ回って、視界から消えたと思えば。

　後ろから、ふわりとした感触。

　は？
　気づけばあの絡んできた人たちは、めんどくさそうに逃げていってた。
　かあっ、と顔に熱が集まる。
　結局、及川くんはなかなか話してくれなかった。
　私はわからなかった。
　これが始まりの(溺愛の)の合図であったことを＿＿。
　うん、この台詞きもいな。